「プライベート&プレミアム」を経験した20~30代には、上位ランクのVIP会員になりたいという欲求が高まる。内輪を経験した人は、特権が与える大きな喜びを実感する。経験する前と後では感覚が変わるのだ。ブランド品の消費において20~30代が新たな消費勢力として台頭してくる中で、デパートは積極的に彼らをVIPに引き入れている。

プライベートサービスをもつホテルは強かった

新型コロナウイルスによって高級ホテルは打撃を受けた。宿泊客も大幅に減少し、レストランのビュッフェの売上は落ち込みがひどかった。しかし、通常「別室」や「個室」と呼ばれるプライベートルームでは、むしろ予約が急増し、1~2週間早く予約が締め切られるほどであった。単なる親睦のための食事もあるだろうが、ビジネスミーティングとしての需要が入り、小規模なプライベートルームでの食事予約は相対的に打撃を受けていない。多くの人と共にする空間は差し支えるので、少数の限られた人だけで過ごせるプライベートルームが好まれたのだ。

高価ではあっても安全なイメージで好まれる高級ホテルにあるレストラン内のプライベートルームは一層安全に思われる。他のレストランが打撃を受ける中で、ホテルのレストランが相対的に善戦したのには、このような理由があった。ホテルやリゾート業界は大きな打撃を受けたが、会員制の高級リゾートは相対的に影響が少なかった。元々プライベートサービスが提供されていたところに、より徹底的に少数を管理するようになったため、安心できる空間だと考えられたのだ。

「ホカンス」需要が下支えしている

高級ホテルでも落ち込んだ客室稼働率を上げるため、アンコンタクトサービスを積極的に打ち出している。ソウル新羅ホテルでは外出自粛期間中、窮屈な家の代わりにホテルの部屋で、他人との接触なしに休める商品として、ルームサービスパッケージを販売した。朝食や夕食のルームサービスが付いた宿泊パッケージは、元々、「寒空の下どこかに出かけることなくホテルの部屋で休もう」というマーケティング戦略だった。毎年、旧正月直後の1カ月間販売していた商品を、視点を変えて新型コロナウイルスに適用させたのだ。

当初は3月の1カ月間のみ販売予定だったが、コロナ禍が続いたため4月まで販売を延長した。ホカンス〔訳者注:ホテルとバカンスを組み合わせた造語〕が普遍的なトレンドになっているため、外出自粛期間中であってもルームサービスパッケージをはじめとしたサービス空間に対する需要は存在する。高級ホテルでも客室稼働率が20~30%台まで落ち込んでいるのだから、業界としては客室稼働率を少しでも上げるために、こうした需要を取り込むほかない。