そこにやってきた新型コロナウイルスが強力なトリガーになった。革新は往々にして激しい抵抗を受け頭打ちになることが多いが、突然現れた強力なトリガーによって抵抗勢力の論理と力が無力化される場合がある。新型コロナウイルスの襲来からチャンスが生まれることもあるのだ。

最も怖いものは経験である。実践する前は漠然と恐ろしく不便に見えていたことでも、実際にやってみるとその中の長所が見えてくる。やってみれば、メリットに気づくものだ。こうした経験が新たな変化を受け入れる大きな原動力になる。新型コロナウイルスのために仕方なく期限付きの職場閉鎖をし、在宅勤務やテレワークを行っていた企業が、今後も引き続きこの方式を適用する可能性が高まっている。2015年のMERS時も、一部の企業では在宅勤務を実施した。しかし、その働き方が定着することはなかった。

ノートパソコンを操作するビジネスマン
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タテ型の組織文化から脱皮しつつある

新型コロナウイルスによる在宅勤務では違った。その場しのぎの措置で終わらせるのではなく、これをきっかけに働き方の転換を模索する企業が増えたのだ。2019年以降、韓国の大企業はこれまで以上に組織文化の革新や成果主義による昇進、フラット化、アジャイル〔訳者注:agile, 小さい単位に分けて迅速かつ柔軟にソフトウェア開発を行う手法〕を積極的に受け入れ、韓国式のタテ型の組織文化から脱皮するための革新を強力に推し進めているところだったのだ。

これまで在宅勤務やテレワークの普及の足かせになっていたのは韓国的組織に存在する文化的な障壁だった。新型コロナウイルスは企業に思いがけず革新のきっかけを与えたわけだ。

映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』(Kingsman:The Golden Circle, 2017)には、互いに異なる空間にいる人々がARゴーグルをつけて会議室のテーブルに集まり会議をするシーンがある。これを進化させれば、ゴーグルがなくてもホログラムを使って異なる空間にいる者同士が目の前にいるかのように会議できるようになる。ウェブ会議の未来の姿だろう。

現在のウェブ会議では、相手はモニターの中にいる。各所にいる複数人と同時にウェブ会議をすれば、モニター画面に複数人の顔が映る。直接対面するわけではないが、文字通り「顔を見ながら」会議するのだ。あえて顔を合わせることなく、モバイルメッセンジャーを使った会議をすることもある。その他、Eメールでのやり取りもある。この場合は、リアルタイムで用件だけを簡単明瞭に伝えることになる。まだホログラム会議はできないが、科学技術はコンタクトの方法も空間的制約をなくす方向へと進化させていくだろう。