コロナ対策に機動性を欠き、経済的な落ち込みを招いた

アベノミクスの「光」と「影」を総合すると、実質GDPの推移から見た上の評価とほぼ一致するのではなかろうか。

しかし、昨年10月の消費税引き上げ以降の実質GDPの推移は、こうしたあれやこれやの評価を無意味にするほどの激動期に突入している。消費税の10%への引き上げによって2019年10~12月期に大きく落ち込んだGDPは、2020年1~3月期にもはかばかしく回復しなかった。

そこへ新型コロナの到来である。4~5月には緊急事態宣言が発令され、経済活動は大きく抑制された。このため、2020年4~6月期の実質GDPは485兆円へと大きく落ち込み、第2次安倍政権発足時の498兆円を下回ってしまった。「今までの努力はいったい何だったのだろうか」と嘆いてもおかしくない落ち込みである。

2020年8月28日、首相官邸で行われた安倍内閣総理大臣記者会見(写真=代表撮影/ロイター/アフロ)
2020年8月28日、首相官邸で行われた安倍内閣総理大臣記者会見(写真=代表撮影/ロイター/アフロ)

この2020年4~6月期の実質GDPの対前期の落ち込みは年率換算で27.8%だった。欧米の同期の落ち込み(速報)は米国32.9%、ユーロ圏(19カ国)40.3%と伝えられているので、米国よりは5%ポイント程度、ユーロ圏よりは12%ポイントほど落ち込み幅は小さかった。

とはいえ、感染被害がより甚大であって都市封鎖や地域間の移動禁止まで実施した欧米諸国と比べた時、移動や営業の自粛にとどまった日本の落ち込みはもっと小さくてもよかったはずであり、被害の程度の割には、経済への影響は大きかったといえよう。

記事の最初にふれたように安倍政権が健康上の理由などでコロナ対策に機動性を欠く結果となったことがこうした経済的な大きな落ち込みを招いた一因とも考えられる。

従って、これこそが、経済運営を最重要視してきた安倍首相に辞任を決断させた最大の理由だったと推測されるのである。

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