コロナ感染被害が軽いのに経済へのダメージを抑えられなかった
●コロナ対策の司令塔となるべき2閣僚(新型コロナ特措法関連は西村康稔経済財政・再生相、感染症法関連は加藤勝信厚生労働相)に、この分野に、特段、通じているわけでもない適切とはとても思えない政治家を側近だからという理由だけで登用した結果、説得力のない説明、あるいは指導力や機動性を欠く政策対応にむすびつき、国民の信頼を得られない結果となった。
●後段でふれる実質GDPの推移上での大きな経済の落ち込みに見られる通り、感染被害が軽い割に、経済へのマイナスの影響を有効に抑えられなかった。
人的な感染被害が他国と比べて軽微であり、感染対策や感染予防と経済の両立に関してもそう間違ったことをしてないと見られるにもかかわらず、こうした政策対応の不適切さが災いして、ピューリサーチセンターの調査結果に見られるように、国の対応への国民の評価が他国と比較して格別に低い結果となったのだと思われる。
おそらく、安倍首相の健康上の理由もひとつの理由となって上記のような事態を招いたのであり、それを本人も分かっているだけに、今回、辞任の決意をしたのだと推測される。
内閣支持率の推移データで振り返る第2次安倍政権
政権が行う政策運営に対する国民の総合評価は「内閣支持率」で確認できる。そこで、次に、第2次安倍政権の内閣支持率の推移をNHKの世論調査結果から追ってみよう(図表2参照)。
内閣支持率がメディアで報じられる場合、その政権のみの推移が示されることが多いが、実は、過去の政権の推移とともに示して比較しながら判断しないと真相が明確にならないといえる。そこで、ここでは、2001年4月26日に発足した小泉政権以降の推移を追った。
一見して分かるように、第2次安倍政権(2012年12月26日~)は、「長くて安定していた」という特徴を持っている。全体的な内閣支持率の高さとしては「小泉劇場」と称された小泉内閣がほとんど常に45%以上の水準だったのには及ばないものの、「長さ」と「安定性」は小泉政権を上回っていたといえる。
「長さ」については、第2次安倍政権はすでに辞任表明に先立つ4日前の8月24日には政権発足後からの連続在任日数が2799日に達し、佐藤栄作政権を抜いて歴代最長になっていた。
また、「安定性」については、図表から見て取れる支持率の上下の振幅が小泉政権より概して小さいことからもうかがわれる。
小泉政権と第2次安倍政権の間の時期には、短期政権が連続して6回入れ替わった。第1次安倍内閣を含む自民党の3首相(安倍晋三、福田康夫、麻生太郎)と民主党への政権交代後、2009年9月16日に発足した鳩山内閣以降の民主党3首相(鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦)である。
これら短期6内閣に共通している特徴は、何といっても、60~70%という当初の人気の高さが、たちまちのうちに20%前後の水準にまで急落し、首相が辞任に追い込まれたという点にある。
私は、内閣支持率を判断する場合、所属政党への支持率の高さとの関係を重視すべきだと考えている。そのため、図表には、自民党支持率、民主党支持率(民主党政権期のみ)の推移を書き入れておいた。
所属政党への支持率より内閣支持率のほうが高ければ、その首相の下で選挙を戦うことが所属議員にとって有利であるし、逆であれば、別のリーダーの下で選挙を行ったほうが有利だと思うであろう。
そのため、内閣支持率が低くなった時というより、むしろ政党支持率を内閣支持率が下回った時に党内抗争が惹起される可能性が高く、すなわち政権の本当の危機が訪れるのである。