記者から、レガシーは何かと聞かれ、東北の復興、400万人の雇用の創出、地球儀を俯瞰ふかんする外交などと述べたが、開始から20分ぐらいで、声がややかすれ、口が乾くのだろう、唇を舐めるようなしぐさをした。

拉致問題や日ロ交渉に進展がなかったことを聞かれ、「痛恨の極み」といった。

「私物化したのでは」の質問に怒気をにじませ…

総理の資質について問われると、首相という職務は一人ではできない、大事なのは「多くのスタッフや議員たちとのチームワーク」と答えたのが、安倍らしかった。辞任は一人で考えて決めたという。憲法改正、地方創生、核兵器廃絶、IT化の遅れ、メディア対策などについての質問が出たが、おざなりの答えしかしなかった。

少し怒気をはらんだいい方をしたのは、「政権を私物化したのでは」と聞かれた時だ。強い口調で「私物化をしたことはない」といい切った。東京五輪については、私の後任がしっかり準備を進めていかなくてはいけないと答えた。中止という考えはないようだ。

フリーの記者たちにも質問をさせた。だが、不思議なのは、安倍の在任中にこじれに拗れた日韓関係と日中関係について、誰も質問しなかったことだ。

両国との関係は、これからの日本の命運を決めるかもしれない重要な問題である。安倍が、私のやり方は間違っていなかったというのか、至らないところもあったというのか、韓国、中国の要人たちもテレビを注視していたはずだ。

1時間の会見の中で、安倍から、任期途中で辞めることへの悔しさは感じられなかった。むしろ、ようやく辞められるという安堵の表情が垣間見えた気がした。

政権に近い2紙の評価は対照的だった

翌日の朝刊各紙を見てみた。スポニチの「アベNOレガシー歴代最長だけ」(29日付、11版)という見出しが一番的を射ていた。

安倍に近いといわれた産経新聞と読売新聞の論調が違うのが面白い。

産経は産経抄で、「『桜を見る会』をめぐる今となっては、どうでもいいようなスキャンダルでも新聞やテレビで連日とりあげられ、国会で叩かれれば、誰だってストレスがたまる」と、持病を悪化させたのはメディアの責任とでもいいたげな物言いである。さらに、「まあ、書かずもがなだが、まだ65歳。健康さえ回復すれば、郷里の大先輩、桂太郎の如く3度目もある」と、安倍が泣いて喜びそうなことをいっている。最後まで安倍のポチを貫くところは潔いというべきか。