文化庁の『宗教年鑑』によると、平成の30年間でキリスト教系の信者数は5万人増えたが、仏教系は4000万人減った。一体なにが起きているのか。宗教学者の島田裕巳氏は「日本は宗教消滅に向かっている。とくに仏教系は深刻な事態に直面している」という――。

※本稿は、島田裕巳『捨てられる宗教 葬式・戒名・墓を捨てた日本人の末路』(SB新書)の一部を再編集したものです。

京都の塔
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平成の時代、宗教信者数は大きく減少した

世界の宗教地図は大きく変わろうとしている。とくに、世界最大の宗教組織であるカトリック教会は、根本的な危機に直面している。では、日本の宗教はどうなのだろうか。

昭和の時代においては、日本の各宗教団体は信者の数を伸ばしていった。ところが、平成の時代になると、事態は大きく変わり、信者数は相当に減少するようになった。そのことは、宗教法人を所轄している文化庁が毎年刊行している『宗教年鑑』にはっきりとした形で示されている。『宗教年鑑』には、いくつかの数字があげられているが、ここでは、「包括宗教団体別被包括宗教団体・教師・信者数」を取り上げたい。

宗教法人について詳しくないと、包括宗教団体や被包括宗教団体の意味はわからない。簡単に言ってしまえば、前者は仏教教団で言えば宗派にあたり、後者は個々の寺院のことをさす。平成の約30年のあいだにどういった変化が起こったかを見てみよう。まず、昭和63年版からの数字をあげる。

総数 1億9185万0997人
神道系 9617万7763人
仏教系 8666万8685人
キリスト教系 89万5560人
諸教 810万8989人

次に、今のところ最新の令和元年版の数字をあげる。

総数 1億3286万3027人
神道系 8009万2601人
仏教系 4724万4548人
キリスト教系 95万3461人
諸教 457万2417人

信者数は「3割」減少している

これは、文化庁が調査した数字ではない。包括法人の側が報告してきた数を、そのまま『宗教年鑑』に載せたものである。

その点では、果たして実態を示したものなのかという疑問が生まれる。けれども、ほかに使える資料がない。信者の数を調査しようにも、国民全体を対象として実施することなど不可能である。その点で、この数字を使うしかないのだが、それでも重要な変化は見て取ることができる。

まず総数である。平成がはじまる段階では、信者数は全体で1億9000万人に達していた。日本の総人口が、1990年(平成2年)の時点で、およそ1億2361万人だから、信者数はそれを上回っている。主に、神社の氏子として数えられている人たちが、同時に寺院の檀家としても数えられているからである。これは別に不思議なことではない。私たちは、長く続いた神仏習合の時代の名残で、神道と仏教の双方にかかわっているのだ。

その総数が、令和元年版では1億3000万人にまで減少している。およそ5900万人減っている。3割の減少である。

これは驚くべき数字である。平成のあいだに、宗教の世界で大変な事態が起こったことになる。神道系だと、9600万人が8000万人に減少している。こちらは1割7分の減少である。神道系以上に減少が著しいのが仏教系である。8700万人が4700万人にまで減っている。なんと4割5分も減っている。半減に近い。