創価学会と密接な関係を持っていた「日蓮正宗」

平成の約30年のあいだに仏教系の信者は半減した。これが事実なら、とんでもないことである。

ただ、これについては、一つ考慮しなければならないことがある。仏教系の信者急減の原因として、ある宗派の事情がかかわっているからだ。その宗派とは日蓮正宗のことである。日蓮正宗と言っても、多くの人にはピンと来ないかもしれない。

日蓮正宗は、日蓮宗の一派ということになるが、以前は日本で最大の新宗教である創価学会と密接な関係を持っていた。昭和の時代には、創価学会に入会する際に、会員は自動的に日蓮正宗に入信した。それは、日蓮正宗の特定の寺院の檀家になることを意味した。そして、入信の際には、家の仏壇に祀る曼荼羅を授与された。曼荼羅の中心には、「南無妙法蓮華経」の題目が描かれている。そのもとを書いたのは宗祖である日蓮で、檀家はその写しを授かるのである。

戦後、創価学会は相当な勢いで信者を増やした。そのため、日蓮正宗も膨大な信徒を抱えるようになった。街のなかで、「正宗用仏壇」という看板を掲げた仏具店を見かけることがある。正宗とは日蓮正宗のことで、そこで創価学会の会員は仏壇を買い求める。正宗用仏壇には、曼荼羅を掲げるためのフックが付けられており、一般の仏壇とは形式が異なっている。

ところが、1970年代になると、在家の組織である創価学会と、出家の組織である日蓮正宗の関係が悪化した。創価学会は、戦後急成長をはじめた段階では、自分たちの教えの正しさを証明するために日蓮正宗という後ろ盾を必要とした。だが、巨大教団に発展することで、それが不要になったのだ。

日蓮正宗による「破門」で減少した1684万人

創価学会と日蓮正宗との対立が激しくなったのは1990年(平成2年)のことである。翌年には、日蓮正宗が創価学会を破門した。これで、創価学会の会員のほとんどが日蓮正宗から離れた。日蓮正宗寺院の檀家ではなくなったのだ。『宗教年鑑』昭和63年版では、日蓮正宗の信者数は1756万6501人となっていた。これが正確な数字なら、人口の1割5分に近い。それが、令和元年版では72万8600人と激減している。1684万人も減ったのだ。

創価学会の会員数は『宗教年鑑』には掲載されていないが、創価学会本部は、会員数をここのところずっと827万世帯としてきた。世帯で数えるのは、曼荼羅が世帯単位で授与されるからである。日蓮正宗から抜けた創価学会の会員は、別の宗派に入信したわけではない。したがって、仏教系の信者数のなかから、1684万人分が消えてしまった。

このことを加味して考えると、仏教系の信者の数は、平成の30年のあいだに2300万人減少したことになる。4000万人よりははるかに減少の幅は小さい。それでも2割6分の減少である。仏教系は4分の3に縮小したのだ。