住む場所を選ぶときには「地名」の歴史を調べておいたほうがいい。不動産コンサルタントの長嶋修氏は、「地名は土地の履歴書だ。そこが過去にどんなところだったかわかる。例えば、地名にサンズイの漢字が入っている土地は、かつて川や沼・池・湿地帯だった可能性がある」という——。

※本稿は、長嶋修、さくら事務所『災害に強い住宅選び』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。

コンクリートの地面に走る亀裂
写真=iStock.com/SteveCollender
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多摩川の両岸に同じ地名がある理由

台風19号による大きな浸水被害があった川崎市の武蔵小杉駅周辺や東京都世田谷区の二子玉川周辺は、ハザードマップで浸水の可能性が指摘されていた地域でした。もともと多摩川は大きく蛇行しており、川を直線に付け替えながら堤防を整備してきた歴史があります。

戦後の高度経済成長期、そうしてできた土地には工場が立ち並んでいましたが、90年以降、バブル崩壊による工場撤退などで土地が売却されました。自治体は周辺の高度利用を意図して高さ制限や容積率などを緩和、そこにタワーマンションが続々建設されるといった、土地利用の変遷がありました。

昔の多摩川は大変な暴れ川でした。江戸時代の文献には洪水の記述が多くあります。堤防がなかった明治以前にはたびたび流路が変わり、時間の経過とともに現在の流路に河川を付け替えて直線にしてきました。「等々力(とどろき)」という地名は世田谷区と川崎市中原区にありますが、明治に分かれるまでは1つの「等々力村」でした。川崎の「等々力」は、多摩川の付け替えによって川の流れが変わり、飛び地になったというわけです。