※本稿は、池田清彦『自粛バカ』(宝島社)の一部を再編集したものです。
麻生財務相「おたくとうちの国とは国民の民度のレベルが違う」発言
日本のコロナの死亡者数がアメリカやヨーロッパより少ないことについて、財務大臣の麻生太郎がこんなバカなことを言っていた。
「『コロナの死者数が多い国から何か特別な治療薬でもあるのか』とよく電話がかかってきたが、『おたくとうちの国とは国民の民度のレベルが違う』って言ってやるとみんな絶句して黙る」
マスコミで取り上げられたのはこの6月4日の参院財政金融委員会の発言だが、毎日新聞によると、実は2カ月前(4月6日)の参院決算委員会でも「アメリカやら何やらに比べりゃ、はるかに日本の自粛のほうが効果ありますからね。アメリカ人に対して『俺たちは民度が高いからだ』と言ったら笑っていましたけれど」と述べていたという。
麻生太郎は、政府の言うことを聞かないやつばかりの国は民度が低い、お前らの国は国民がちっとも言うこと聞かないじゃないか、だから感染が拡大するんだと言いたいわけだ。
自分たち(政府)の言うことをおとなしく聞く国民ということ?
しかし、政府の言うことを聞かないというのは、自分の頭で判断して行動しているわけだから、それは自立性が高いということで、むしろ民度が高いのだ。
ところが、麻生に限らず、政治家の言う民度の高い国民とは、自分たちの言うことをおとなしく聞く国民を指している。つまり、コントロールが利く国民=国民の民度が高い、ということだ。学校で先生の言うことをよく聞く優等生は民度が高く、反抗ばかりしている不良は民度が低いと言いたいわけだ。
しかし、反抗したり学校をサボったりする生徒は民度が低いのか。反抗的な生徒は自分で判断して学校をサボり、教師の言うことを聞かないわけだから、自分の頭で考えている分だけ民度は高いと思う。
たとえば、遊牧民のマサイ族は、自国も国境もなく、そういうなかで勝手に生きている。自分たちの力だけで全部やり、自立して生きている。民度が低いなんて言われたらマサイ族は怒るよな。民度が高いに決まっている。