ランニングシューズ市場を席巻している「ナイキの厚底」に国内メーカーのミズノが「本気の反撃」を宣言した。7月1日に発表した新商品はナイキのトップモデルより1万円ほど安い。スポーツライターの酒井政人さんは、「今年の箱根駅伝では、このシューズのプロトタイプを履いた選手が区間新記録を達成している。形状もハイカットと特徴的で大注目だ」という――。
写真提供=ミズノ
創価大・嶋津雄大が履いた純白のシューズ

箱根駅伝、ナイキ厚底よりインパクト大のミズノの「純白シューズ」

7月1日、噂になっていたシューズの全貌が明らかになった。

正月の箱根駅伝10区で区間新記録をたたき出した創価大・嶋津雄大が履いていた“真っ白いシューズ”だ。

ミズノは昨年12月からホームページ上で「本気の反撃」という挑発的な言葉を掲げていたが、この日、オンライン上で「ミズノ 新素材&新製品 プレスカンファレンス」を開催。同社としては初となるリモート記者発表で「世界のシューズ市場の変革」を宣言した。

まずは、水野明人社長が登壇。以下のようなあいさつから始まった。

写真提供=ミズノ
 ミズノ代表取締役社長の水野明人氏

「昨年末から今年のはじめにかけて、ランニング市場は厚底シューズが席巻しまして、箱根駅伝では10区間中9区間で区間賞を取りました。しかし、新素材を搭載したプロトタイプのシューズを履いた創価大・嶋津君が10区で区間賞を獲得して、少しは(ミズノのシューズが)注目を浴びたのかなと思います」

直接、言葉にすることはなかったが、「ナイキ」への対抗心が伝わってくる。そして、新素材を採用したモデルについては、「すごい反発力を持ったシューズ。皆さまに体感していただきたい」と語った。

保守的なデザインを一変、反発性向上のヒントは「野球とゴルフ」

新素材は「MIZUNO ENERZY(ミズノエナジー)」というもので、約2年かけてミズノ史上最高の反発性に到達したという。開発については、シューズだけでなく、多くのスポーツ用具を科学的な視点で研究開発してきた知見を活用した。

なかでも、昔から多くのプロ選手の愛用者がいる、同社製野球用バットやゴルフクラブなど、遠くに飛ばす、強い球を打つという、反発性をテーマに追求する用具の研究が役立ったという。

開発担当者はこう言って、新素材のシューズの革新性に胸を張った。

「シューズの素材というよりは、金属のバネに近いんです。エネルギーロスが非常に小さいので、高く跳ね返るとともに、何回も跳ねる。とにかく柔らかくて、よく跳ねる。驚きと興奮を提供できると思います」

新素材を採用したミッドソールは、競技特性や使用シーンに合わせて3タイプを展開する。最も柔らかさと反発性が高いソール「MIZUNO ENERZY CORE(コア)」は、一般的なシューズに搭載されているソールの素材と比較して反発性が約56%、柔らかさは約293%も向上したという。