新型コロナウイルスの影響で多くの事業者が売り上げ減少に苦しんでいる。どうすればいいのか。会員数約1500社のビジネスコミュニティを主宰する小阪裕司氏は、「この状況下でも来店者数が6倍になった酒屋が岐阜にある。その酒屋はダイレクトメールの書き方を変えたことが奏功した。どんな業種にも参考になるはずだ」という——。
メッセージを書き込む女性
写真=iStock.com/AlenaPaulus
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普段なら「あいさつ文」や「雑学クイズ」を書くが…

3月からのコロナ情勢下で、多くの店・会社は売り上げを大きく落とした。業種や商品によっては特需もあったが、特に3月から4月にかけ、人々は未知のウイルスに恐怖感を抱き、先行きに大きな不安を感じ、それらは消費社会にも大きな影を落とした。しかし、そんな情勢下だからこそ、お客さんの心を大きく動かし、癒やし、結果として来店や購入などの行動を生んだ話がある。

ひとつは、岐阜県大垣市の「藤田屋酒店」でのこと。3月にお客さんに送ったダイレクトメール(以下、DM)が、通常の6倍の反応だったというものだ。とはいえ今回、時勢もあり、店主はことさらに集客を図ったわけではない。ではどんなことをやったのか。

同店では、普段からお客さんにDMを送っているが、今回、送付するにあたって店主は工夫した。例えば、宛名面の下のスペース。普段なら何気ないあいさつ文や「雑学クイズ」のようなネタを書くのだが、今回はこういう情勢下だ。お客さんも不安だったり気持ちがなんとなく暗くなったりしているだろう。ならば今回は、そういう気持ちに寄り添った文章を書こうと考えた。

そこで「新型コロナウイルスの騒動で世の中心配ばかりです……。どうかお互いお体に気をつけて頑張りましょうね」との書き出しから、いつもより一層柔らかな文章をつづった。また他では、いつもなら商品訴求がメインのレターの表にも、まず「こんなときだからこそ、心豊かに楽しく、あったかい時間を過ごしたいです。その一助になれば……」との文章から始め、商品の紹介につなげていった。

宛名面の空きスペースに、コロナ危機に寄り添う文章を書く
提供=藤田屋
同封のDMで、温かさや楽しみが得られることを動機づけする
提供=藤田屋