外出自粛が続く中で、売上減少に悩む飲食店を助けようという動きがある。店の食材をまとめた通販セットを販売し、その調理方法をビデオ会議「Zoom(ズーム)」で解説するというものだ。「ズムメシ」の発起人で、食品メーカー勤務の辻本美紀さんが、取り組みの狙いを解説する——。

「あのお店に、オンラインで集まろう」

4月27日に行われた「ズムメシ」の様子
4月27日に行われた「ズムメシ」の様子

「ズムメシ」とは、自宅にいながらオンラインを介して飲食店に集まり、みんなで食事やお酒を楽しむイベントのこと。Zoomを使ってご飯を楽しむ、略してズムメシというわけです。今年の3月末に第1回を実施し、5月末で第20回を迎えます。

私は食品メーカーでEC事業に携わっており、夫は飲食店のオーナーです。コロナ禍で気軽に外食を楽しむことが難しくなる中、食に関わる人間として「今だからこそ、飲食店ができることは何か」と考えた結果がこのズムメシでした。

お店の味を家で楽しむことはできないだろうか。それも単なるお取り寄せではなく、シェフや料理人から素材や調理法へのこだわりを聞いたり、他のお客さんと交流したりしながら、外食をリアルに体験する以上の価値をオンラインで提供することはできないか——。

お客さん目線の発想からたどり着いたのが、「あのお店に、オンラインで集まろう」というズムメシのコンセプトです。イメージは、レストランの厨房を囲む“ロの字”のカウンター。自宅にいながらお店の人と会話できて、他のお客さんともつながれる場所です。

コンセプトがかたまった後は、クリエイターやフードコーディネーターの友人たちに相談して運営メンバーになってもらいました。3月30日にプロトタイプとして第1回のズムメシを実施した後も、「飲食店の本当の価値は何か」「飲食店とお客さんはどんな関係にあるのか」をメンバーたちと何度も話し合ってきました。

ズムメシが目指すのは、飲食店での豊かな食体験をつないでいくこと。飲食店にとっては、目の前の売り上げを確保できるだけでなく、将来のファンづくりも期待できます。一方、お客さんにとっては、自粛生活が続く中で非日常を感じられるメリットがあります。