子どもの学力向上に悩む親は多い。「頭のいい子」を育てるのはどうすればいいのか。アメリカと日本での子育て経験を持つ医師の安川康介氏は「高価な教材をそろえたり、塾に通わせれば『頭がいい子』に育つわけではない」と指摘する。安川氏によれば、親が子どもにどう声をかけるかが重要だという。科学的な知見に基づいた、その効果的な方法とは――。(聞き手・構成=昼間たかし)
安川さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
『科学的根拠に基づく最高の勉強法』(KADOKAWA)を書いた安川康介さん。

お金をかけずに「頭のいい子」を育てられるか

――わが子を「頭のいい子」に育てたいと考える親は多いと思います。高価な教材をそろえたり、塾に通わせなければダメなのでしょうか。

「頭のいい子」という表現は少し曖昧かもしれませんね。私が思うに、「頭のいい」とは、単に試験の点数が良いということではなく、人間や世界に対して強い好奇心を持っていることや、論理的な思考力、困難に直面しても諦めずに取り組む粘り強さ、行動力、他人の感情や思考を想像する力、複雑で曖昧な事柄を単純化しすぎずに分析できる能力など、さまざまな要素が含まれると思います。

親にできることはたくさんあります。まず重要なのは、子どもの好奇心を大切にすることです。子どもが「なぜ?」「どうして?」と質問してきたら、それを面倒がらずに、できる限り丁寧に答えてあげることが大切です。

好奇心がある時は、学ぶモチベーションが高く、覚えやすく、忘れにくい。学習において脳が最高の状態にあるとも言えます。

例えば、私の場合、子どもと一緒に落ち葉を見たことがきっかけで、なぜ季節があるのかという話から、地球が傾いていることや、その理由としてのジャイアント・インパクト説まで話が及んだことがあります。また、この前小学1年生の息子に「なぜ人類は1年は365日だと分かったのか」と聞かれたので、ヘリアカルライジングやナイルの氾濫の話をして、夜には外に出てシリウスを一緒に探しました。学びの機会は日常にいくらでもあります。日常の些細なことから学びのきっかけを見つけ、子どもの興味に寄り添って知識を広げていくことが重要だと考えています。

親子の会話が子供の学びを促す

――家庭で実践されている他の取り組みはありますか。

私の家庭では、寝る前に今日知った面白い知識を教え合うことがあります。これは子どもの学びを促進するだけでなく、親子のコミュニケーションも深めることができます。子ども達は大人でも知らないことを知っていることがあります。新しい知識を教えてもらった時は「パパは40年以上生きているけどそれは知らなかった。教えてくれてありがとう」と伝えます。

また、アメリカで暮らす中で気づいたのですが、子どものマインドセットを育てることも非常に重要です。驚いたのは娘が通う公立の小学校で、マインドセットの教育が早くから導入されていることでした。娘が小学3年生になって、最初の週に学校で教わったのが「Fixed Mindset(硬直マインドセット)」と「Growth Mindset(成長マインドセット)」という考え方でした。