思い出す機会を与えてあげる

――記憶力を高めるためには、どのような方法がありますか。

記憶力を高めるには、アクティブリコールという方法が効果的です。これは、勉強したことや覚えたいことを、能動的に思い出す作業のことです。

例えば、子どもが何かを学んだ後に、その内容について質問をする。または、「今日学んだことで一番重要だと思うことは何?」と聞いてみる。このように、ただ受動的に情報を受け取るだけでなく、積極的に思い出し、アウトプットさせる機会を作ることが大切です。

また、分散学習も記憶の定着に有効です。同じ内容を一度にまとめて勉強するよりも、時間を分散して複数回学習するほうが、長期的な記憶の定着に効果があります。大事な情報は、時間が少し経った時に、繰り返し聞いてみて、繰り返し思い出すべきだと教えています。

安川康介『科学的根拠に基づく最高の勉強法』(KADOKAWA)
撮影=プレジデントオンライン編集部

――問題解決能力や創造性を伸ばすために、どのような取り組みが効果的でしょうか。

創造性や問題解決能力を伸ばすには、子どもに「考える機会」を与えることが重要です。例えば、日常生活の中で起こる小さな問題だけでなく、環境問題や人種差別等の大きな問題についても、「どうしたらいいと思う?」と子どもに尋ねてみるのもいいでしょう。

例えば、先日、子ども達と一緒に星の一生について図鑑を読んでいました。50億年後、太陽が赤色巨星になる頃には、地球で生命は生きられなくなります。その時、人類はどうなっていると思うか、もし存続していたとしたらどうするべきか、他の星に移動する場合、人類以外の生物はどうするべきか、超長距離の移動が可能かどうかなど、ということについて子ども達と話しました。小学校低学年でも実に色々なアイディア、考え、疑問が出てきます。確固たる答えがない問題について、論理的に話し合う練習を普段からしておくことには意味があると感じます。

また、精緻的質問や自己説明という方法も効果的です。これは、見たことや学んだことについて「なぜそうなるのか?」「どのようにそうなっているのか?」と自問自答させる方法です。この過程で、子どもは既存の知識を新しい情報と結びつけ、より深い理解を得ることができます。

何か知識を持つだけでなく、疑問を持つ、質問をする、ということも非常に大切だと考えています。なので、何か質問に答えられた時より、子ども達が面白い、鋭い、新しい視点の質問をした時に「それは本当に良い質問だね!」と褒めることが多くあります。

安川さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
あえて答えを教えず、自問自答させる方法も効果的だという。