「利用客」でなく「顧客」にする活動が実を結んだ
なぜこのような“はからい”が人を動かすのか。それは、人がほかの人との“つながり”を求める生き物だからだ。
これらのお店・会社は、元々、顧客との“つながり”を強くし、関係性を深め、お客さんを単なる「利用客」でなく、「顧客」とするべく活動してきた。例えば、藤田屋酒店やファインエイドでは、普段からお客さんに“ニューズレター”と呼ばれるDMを送っている。それは、単に商品のセールスだけでなく、お客さんとの関係性を深める役割を果たしている。
おおさネイチャークラブでも、先の例にあるように、メルマガやブログ、フェイスブックなどでコミュニケーションを絶やさず行ってきた。また、そうしたコミュニケーション機会に関係性を深めるためには、商品の訴求やイベントの案内などビジネスに直結することだけでなく、彼らの日常の出来事など、人柄が感じられるものを発信することが重要だ。おおさネイチャークラブはそれも意識的に行ってきた。
こうしたこれまでの活動が実を結び、彼らの店・会社には単なる利用客ではなく、双方が“つながり”を感じている「顧客」がいる。それが今回の結果の基盤となっている。
ビジネスにおける”つながり”は精神論ではない
そしてこの結果を生み出した決め手は、“メッセージ”だ。藤田屋酒店、おおさネイチャークラブ、ファインエイドが発信したメッセージに共通していることは、顧客らの不安感、気持ちが沈んでいる状況、その心情に寄り添うものであることだ。そこに「今、売ろう」という気持ちはなく、そのような言葉もない。しかしそういうメッセージが届いたとき、お客さんは「動いた」のである。
人は、他の人との“つながり”を求める生き物だ。今回、この事態の下、人はより強くそれを求め、大切さに気がついている。私は、ビジネスにおける“つながり”の重要性をもう30年近く説き、20年間科学的にも研究しているが、しばしば「精神論」と誤解され、実行する会社はいまだに少ない。しかしそれではいけない。これは、ビジネスが成り立つための重要なメカニズムに関わることだ。そしてこれからのウィズコロナ、アフターコロナの社会へ向け、強化すべきビジネス活動のひとつなのである。