話を聞いているのかわからない人にはどう接すればいいのか。脳科学・AI研究者の黒川伊保子氏は、「コミュニケーションの仕方に問題があるだけで、やる気がないわけではない。ただ、そのような人は認知力も低いので、かんでふくめるように何度も言わなくてはならない」という——。

※本稿は、黒川伊保子『コミュニケーション・ストレス 男女のミゾを科学する』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

女性マネジャーがメガホンで怒鳴ることにショックを受ける若い女性社員
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身体の共鳴も意図を伝え合う大事な要素

1996年生まれ以降の世代で、男女関係なく「共感障害」を持つ若者が増えている。ミラーニューロン不活性型の、他者にうまく共鳴できない若者たちである。

ことばがコミュニケーションの要であることは、誰も否定しないだろう。しかし、もう一つ大事な要があることを意識している人は少ない。表情や所作、息遣い。いわゆるボディランゲージである。

人間は、自然に、話し相手の表情や所作に共鳴して、連動する。相手が満面の笑みをたたえれば、つい笑顔になる。うなずけば、うなずき返す。リラックスすればリラックスし、緊張すれば緊張する。

それがうまくいく間柄では、息遣い(吸って吐く、止める)までが連動している。

「息が合うふたり」というのは、まさに、そのままの意味なのである。

社交ダンスのペアは、呼吸を合わせている。呼吸が合わないと、相手のリードがわからない。意図が伝わらないのである。しかしながら、ダンサーたちは、「呼吸を合わせよう」と格別努力はしていない。組む前に、顔を見合わせ、相手の腕を広げるしぐさに連動すれば、自然に呼吸が合ってしまうからだ。

身体の共鳴は、意図を伝え合う大事な要素なのである。