異性と話していて、認識の違いでストレスを感じたことはないだろうか。脳科学・AI研究者の黒川伊保子氏は、「実は、とっさのものの見方が男女で違う。そのため、ストレスが生じる場合がある」という——。

※本稿は、黒川伊保子『コミュニケーション・ストレス 男女のミゾを科学する』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

レストランでロマンティックなディナーをとる幸せなカップル
写真=iStock.com/Prostock-Studio
※写真はイメージです

男女の視覚の守備範囲の境界線は約3メートル

「夫は、あれがない、これがない、と忙しい私を呼びつける」、「ドライブ中、妻にナビゲーションさせるとイライラする」、そんな経験はないだろうか。

これ、実は、とっさのものの見方の違いから生じる男女間ストレスなのである。

脳が不安を感じたとき、男性は、空間全体を把握し、動くもの・危険なものをいち早く察知しようとする。女性は、自身の周辺や、目の前の大切な存在に意識を集中する。

狩りをしながら進化してきた男性たちは、「遠く」の「動くもの」に感度が高くないと生き残れなかったからだ。子育てを担当してきた女性の側は、自分と子の周辺を綿密に見て、針の先ほどの変化も見逃さないセンスがいる。人間の赤ちゃんは、毛皮に覆われてはいない。生後1年も歩けない。あらゆる哺乳類の中で、最も脆弱な存在だからだ。だから女性は、「近く」を「綿密に」見るのである。

男女の視覚の守備範囲の境界線は、約3メートル。男性はその外側を、女性はその内側を担当している。