「話、聞いてるの?」と言われた部下はどう考えるか
人の話を、共鳴しない(うなずかない、表情を変えない、呼吸を合わせない)で聞く。本来ならば、「納得できないとき」の態度である。
部下がそういう態度をとれば、上司は「話聞いてるのか」「何か、言いたいことがあるのか」などと聞くことになる。
本人が意図的にその態度をとっているのなら、言われたことに心当たりがあるので、反応のしようがある。あやまるのか、これをチャンスに不満を表明するのか……。
しかし、まったく心覚えがないのに、このセリフを言われると、人はきょとんとしてしまうしかない。なぜ、そんないちゃもんをつけられるのか理解に苦しむ。
反応しないから「話聞いてるの?」と問いただしたのに、さらに何の反応もなくスルーされた上司は、「やる気あるの?」と再び問いただすことになる。
これもまた、言われた側はちんぷんかんぷんだ。やる気があるから会社に来て、こうして上司の話を聞いているのに、なぜ改めてそんなことを聞かれるのか……どう答えればいいものやら、さっぱりわからない。
こんな答えようのないくだらない質問をしてくるなんて、上司はバカなのだろうか。あるいは、セクハラではないかと疑い始める。
自分の非に気づかず、パワハラだと思い込む
共鳴しない人間は、存在感が薄いので、人に意見を聞かれることがほとんどない。
「○○くん、どう思う?」「昼、一緒にどう?」などと、自分の両側の新人が声をかけられるのに、自分は無視される。
さらに、共鳴できない人間は、「他者の動き」が脳に写し取れないので、気が利かない。会議後に「先輩がお茶碗を片付けている」のに気づいて、僕がやります、と立ち上がる、なんてことは、ほぼ不可能に近い。先輩が動いているのが網膜には映ってはいるけれど、車窓の風景のように、ぼんやりと見ているだけだからだ。
当然、「きみは、なぜ、やらないの?」と言われることになるのだが、この質問も不思議でしょうがない。「誰か、僕にやれって言いましたか?」と質問に質問で返す羽目になる。
「やれとは言われてない」「誰も教えてくれなかった」を多発する部下がいたら、共鳴力が弱い、共感障害を持つ若者だと思ったほうがいい。
彼ら彼女らにしてみたら、いちゃもんをつけられ、存在を無視される日々である。自分はパワーハラスメントを受けているに違いないと思い込み、実際にそれを人事部に申告するケースも発生している。