プレイガイドを抑えてなんぼ。店の数イコール販売力である。
チケット販売の世界を支配していた商慣習に敢然と立ち向かい、業界の構造を根こそぎ変えてしまったのが、オンラインチケット販売サイト、イープラス(e+)を運営するエンタテインメントプラスの社長、橋本行秀だ。
「販売力というのは店の数じゃない。顧客の数なんですよ。僕はもうずっとそう思い続けてきました」
力説する橋本の言葉には説得力がある。
橋本は、1999年10月末に全国250カ所に開設していたチケットセゾンの店を一斉に閉め、16年の歴史に幕をおろした。これまでとはまったく異なるビジネスモデルを実行に移すためだ。
翌年4月、ソニーグループとの共同出資で設立したエンタテインメントプラスは、イープラス(e+)のサービスを開始。長年親しまれてきたチケットセゾンのブランドを脱ぎ捨て、オンライン販売に賭けた橋本の読みは的中した。
イープラスの会員は2年目に100万人を突破し、直近で640万人に達している。ざっと日本人の20人に1人がイープラスで会員登録をしている計算になる。
「客から手数料は取らない、取れない」の慣習を変えたのも橋本だ。
手数料が取れないならば、客が自ら払いたくなる仕組みを作ればいいと、先行抽選発売のチケットに購買手数料を導入した。同社の売り上げは400億円を突破し、チケットセゾンがずっと果たせなかった単年度黒字化も2004年になしえている。顧客の数こそ販売力だという橋本の信念は証明された。