ロフトを13年間率いた後、昨年の5月に取締役相談役に退いた安森健が、古巣の西武貨店を語る言葉は辛辣だ。
「百貨店業界は。問屋に依存するだけで、自分でものを考えてこなかった。まともに考えていたのは創業の頃だけ。あとはでたらめだね。日本の近代小売業のベースを作り上げたその後は、メーカーや問屋がレールを自分たちで敷いて走り出しちゃった。だから百貨店は新しい業態を何も生み出していないでしょう? 西武はパルコやクレディセゾン、無印良品、ロフトなど、百貨店の中では唯一、新業態をいろいろと作ってきたけれど、その革新的だった西武でさえ本体は変えられなかった。変わろうとした時には、売り場は自分たちのものじゃなかったんですよ。売り場も商品も販売員も全部人様のものだったからね」
百貨店がいかに問屋やメーカーに主導権を明け渡してきたかは、第1章で触れているので、ここでは大きく取り上げないが、これはまぎれもない事実。ただし、百貨店内部にいるとあまり問題視されず、多くの百貨店マンは外に飛び出してから初めて、「おかしい」と気づく。
95年にロフト事業プロジェクト部長に就任するまでの安森も同じだった。百貨店の商慣行がもたらす弊害に疑問を抱くことなく、時を過ごしていたという。
「西武でお勤めした40年中、約30年は気がつかなかった。ロフトは自主的に商品を選び、仕入れ、販売しています。大半が買い取り商品ですからね。問屋やメーカーの販売協力なんてはなから期待できない。いってみれば、ロフトは百貨店を否定するところからスタートして、ビジネスを作り上げていったんです」