坪効率、販売員1人当たりの販売額、時間帯ごとの売上額、買い上げ単価、在庫回転率。感情が入るすき間などない、数字で表された容赦ない実態が上にスムーズに上がれば、トップも後から「聞いてなかった」「知らなかった」「こんなはずではなかった」と経営者にあるまじき言葉を発し、驚き慌てることはなくなる。後から在庫に頭を悩ませることもなくなる。

とはいえ、数値化には抵抗勢力も多かった。

「そんなもの(数値)がなくても回っていくのに、なんでやる必要があるのかという反応です。でも、それは自分たちが在庫を異常だと認識していないから。まあ、歴史的に持ってきた在庫なので仕方がないんですけどね。ただ、経営する側にとって在庫管理は極めて重要。納得はしてくれなくてもいいから、とにかく理解してもらえるよう説明を繰り返しました」

ロフトが分社化したのは96年。最初の5年ほど安森は、始末に時間を充てた。面白みはないが、将来には欠かせない作業に奔走した後、ロフトは企業として盤石な体質に生まれ変わった。

2006年3月からは、ユニットオペレーションと呼ぶ標準化された棚割システムを導入した。ロフトが扱う商品は、売り場面積1500坪を超える大型店の場合、約15万SKUにも達する。約300坪の小型店でも3万~4・5万SKUだ。こうした商品を、ターゲットである若い女性にどう効率的に提案するかの方法論が、ユニットオペレーションだ。

ロフトは商品構成を、「インテリア」「バラエティ雑貨」「文具」「健康雑貨」「家庭用品」の5つのカテゴリーに分類している。ユニットとはこのカテゴリーを細分化したもの。

たとえば、「健康雑貨」であれば、ヘルス&リラックス、ビューティなど4つのユニットに分かれている。各バイヤーは担当するユニットにおける最適な品目の構成を作り、ユニットごとの基本棚割りを作成する。このユニットオペレーションは、出店のスピードアップに貢献した。

そして、ここからロフトの快進撃がはじまった、と言いたいところだが、落とし穴があった。利益を出せる企業に体質改善を行ったはずなのに、2004年度の決算(2004年3月~2005年2月)でロフトは大幅な減益に陥る。経常利益は前年より66%減の7億200万円。

いったい、ロフトに何が起きたのか……。

※ 以降、ロフトが2007年に売上げ前年比14.5%増の684億1900万円、営業利益50%増の26億7400万円を達成するまでのストーリーは、プレジデント社刊『論より商い』(三田村蕗子著)でご覧ください。
※ 本連載は、プレジデント社刊『論より商い』(三田村蕗子著)からの抜粋です。

(撮影=向井 渉)