大手各社がM&A繰り返し首位争いが活発化

その背景には、コンビニ業界が大手3社の寡占化が進んでいるのに対し、ドラッグストア業界はいまだに激しい再編と競争を繰り広げていることがある。特に大手各社がM&A(合併・買収)で急速に規模を拡大し、首位争いが活発になっているのだ。

15年度まではマツキヨHDが売り上げ規模で21年間も業界首位を維持していたが、16年度にM&Aで規模を拡大したウエルシアHDが首位を奪取。さらに18年度にはツルハHDが同様に積極的なM&Aの結果、首位に立った。そして、21年10月にマツキヨHDとココカラファインが経営統合する予定で、両社合算の売上高は約1兆円となり首位に立つ見込みだ。

もちろん、勃発するM&A合戦にはこれ以外の理由もある。こうした再編にはさまざまな理由があるが、ひとつは商品の共同調達によるコスト削減だ。商品の仕入れを一本化することで、仕入れ原価の低減とリベートの増加が期待できる。マツキヨHDとココカラが経営統合するのもこれが大きな理由だろう。

なお、ドラッグストア業界でいうリベートとは、卸業者から薬局等への販売において一定の金額や数量を超える売り上げを達成した場合などに、メーカーから卸業者に対して契約による割戻基準に基づいた金額が支払われることを指す。

ハックドラッグを展開していたCFSコーポレーションを、ウエルシアHDが15年9月に完全子会社にしたのも、こうしたスケールメリットが狙いだと考えられる。まだまだコスト削減余地が大きいので、今後もM&Aが繰り広げられそうだ。

経営統合で新たな需要の取り込みを図る

もうひとつの理由は、政府が推進している「地域包括ケアシステムの構築」だ。政府は、高齢化が進み医療や介護の需要増が見込まれるため、2025年をめどに自宅などで必要な医療・介護サービスが受けられる体制(地域包括ケアシステム)の構築を目指している。ここでドラッグストアは地域の拠点として一翼を担うことが期待されており、経営統合で新たな需要を取り込んでいこうという考え方がある。

もっとも、新型コロナが収束するまではいずれの企業も大きな動きはとりにくいだろう。今のところは、生活インフラとしての役割を果たし、消費者の信頼を勝ち取ることに全力を尽くすべきだ。そうすることで、収束後に活発化すると考えられるM&A競争を有利に進めることもできるだろう。

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