コロナ禍で日本円と日本株が暴落の危機にある。元モルガン銀行日本代表の藤巻健史氏は「日銀は国債や株などを買って日本経済を支えているが、財務状況は悪化するばかり。景気悪化が長引けば、円暴落という最悪のシナリオも考えられる」という――。
衆院財務金融委員会で答弁する日本銀行の黒田東彦総裁(右)。左は麻生太郎副総理兼財務相=2020年3月24日、国会内
写真=時事通信フォト
衆院財務金融委員会で答弁する日本銀行の黒田東彦総裁(右)。左は麻生太郎副総理兼財務相=2020年3月24日、国会内

「日本円は決して安全資産とは言えない」

私は現在、金融資産のほとんどを円ではなく、ドル資産で保有している。それも今現在は長期債でも株でもなく短期のドル資産だ。あまりにドルに偏っているがゆえに、時々、資金繰りを間違えて昼食代の円にも困ってしまうくらいだ。

私は約15年間、米モルガン銀行(現、JPモルガン・チェース銀行)でディーラーを務め、「涙と冷や汗をかく」ことによって生活の糧を得てきたリスクテーカーだ。

負けているときどう耐えるべきかも熟知している。だから私と同じような偏った運用はお勧めないが、現在のような緊急時にはドル資産、それも現金に近い資産を、保険の意味で持つべきだ。

なぜなら、日本円は決して安全資産とは言えないからだ。

私は今の政府・日銀の財政・金融政策は間違えていると強く思っている。2013年に黒田日銀が始めた異次元緩和とは、ハイパーインフレを起こした経験から全世界で禁止されている財政ファイナンス(※)そのものだ。

※政府の借金を中央銀行が紙幣を刷ることによって資金調達をすること。

ハイパーインフレとはお金の価値が暴落すること。給料、年金は毎月上がると予想されるが、パンの値段は毎時間上がる。給料をもらった後、1日、2日は購入できても3日目からは餓死の危機が迫ってくる。日本はその一歩手前のところまで追い込まれているのだ。