つまり、累積赤字増に対する警告が鳴らなくなったのだ。財政規律の崩壊だ。日銀の「国債爆買いの弊害」は財政規律の崩壊にとどまらず、日銀への信頼を根底から覆すリスクを発生させたと言っていい。

昨年9月末時点での日銀保有国債利廻りは0.26%だ。平均残存年数は6~7年だと思うので、10年金利に換算すれば0.3%くらいだろう。現在のゼロ%の長期金利がたった0.3%上昇すれば日銀は債務超過に陥る。0.3%など私のディーラー時代なら1晩で動く。

日銀はたった0.3%の金利上昇で債務超過に陥る

コロナ禍による財政出動で、長期金利は近い将来、世界的に上昇が予想される、中央銀行が必死の買い支えをしているが、いつまで持つか?

4月15日の日経新聞経済教室で小林慶一郎慶大教授は「コロナ危機後の世界では、金利が正常化して80年代ごろの水準に戻るかもしれない」とおっしゃっている。80年代で長期金利が一番高かったのは80年4月の11%、一番低かったのは1988年の4.8%(年末の数字の比較)である。繰り返すが、日銀はたった0.3%の金利の上昇で債務超過に陥る。

日銀は長期国債市場だけでモンスターとなったわけではない。株の世界でも株のETFを爆買いし、今年中には、日本一の株主になるといわれている。世界の先進国で金融政策目的で株を購入している中央銀行など他にはない。

コロナ禍に対し世界各国の中央銀行が大型の金融政策発動を発表したが、そのなかにさえ株の購入案はどこにもない。株価下落で起きる中央銀行の信用失墜が怖くて、そんなものの保有は他の中央銀行には出来ないのだ。当然の感覚だ。

コロナ禍による株価下落で日銀は危機を迎える

今年3月、日本株市場では、日経平均19000円という数字が大いに注目された。日銀の保有株に評価損が生じるかもしれない数字だったからだ。

その攻防戦で「日銀が株式市場に介入した、しない」が注目された。異常な世界だ。そして、日銀はますます深みにはまっていく。私のラフな試算では日経平均1000円の下落あたり1兆3000億円ずつ評価損が膨らんでいく。

日銀は、長期国債や株だけではなく、不動産市場にもリート購入の形で参画している。CPや社債の購入など、他の中央銀行が今回のコロナ禍で、法律を変えてやっと始めようという商品もすでに長い間、時限措置と称しながらも購入を継続してきた。

まさにあらゆる市場に参入し、市場をコントロールしようとしているのだ。市場原理の働かない機関が大きく参加している市場は資本主義の市場とはいえない。計画経済だ。計画経済はいずれほころびが出て崩壊することを歴史は物語っている。