志村けんさんが死後24時間以内に荼毘に付された事情

これは、墓埋法の条文にある「他の法令に別段の定があるもの」に該当するからである。「他の法令」とは「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」第30条の規定のことである。

同規定によれば、「感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある死体の移動を制限し、または禁止することができる」と定め、「24時間以内に火葬し、又は埋葬することができる」としている。

対象とする感染症は、エボラ出血熱(一類感染症)、コレラ・細菌性赤痢・ジフテリア・腸チフス(二類感染症)、腸管出血性大腸菌感染症(三類感染症)など。そして、新型コロナウイルス感染症も同規定に含まれることになった。

だが、誤解を避けるために述べておくが、「24時間以内に火葬しなければならない」ということではない。例えば、遺体を透明の納体袋で包むなどして、感染拡大防止策が取られていれば、通常の葬式をやっても差し障りはない。実際に神戸市では、納体袋をすでに用意し、複数の病院に配布を始めているという。

新型コロナで亡くなった人は「24時間以内火葬」が多い

だが、現実的には新型コロナウイルス感染症で亡くなった方はすぐに火葬されることが多いことだろう。

先に遺骨にしてから葬式をすることを、「骨葬」という。骨葬は孤独死などで遺体の状態が悪い場合、あるいは海外などで死亡した場合に実施されることがある。

骨葬は一見、イレギュラーな対処法のように思えるが決してそうではない。実は北関東や長野などの一部地域では骨葬のスタイルを取っている。

三陸鉄道開業30周年記念企画展のオープン記念イベントに登場したコメディアンの志村けんさん=2014年6月3日、東京都港区
三陸鉄道開業30周年記念企画展のオープン記念イベントに登場したコメディアンの志村けんさん=2014年6月3日、東京都港区(写真=時事通信フォト)

骨葬は、かつて養蚕が盛んだった地域の葬送文化の名残りである。地域の人が死んで、葬式の準備に駆り出されてしまえば蚕の面倒が見られなくなる。とはいえ、火葬を急がなければ遺体が痛む。そんな心配を回避するために先に骨にしておき、蚕の世話を済ませた上で、心を落ち着けて葬式をしたのだ。

ほかに東北の豪雪地帯などでも骨葬をするところは多い。大雪では参列者が参集しにくいという理由である。各地の葬送は、非常に合理的に考えられているのだ。

したがって、先に火葬することが仏教的におかしいなどということはないのだ。志村さんの場合、万が一、遺体からの感染を防ぐため、緊急避難的な措置として骨葬にせざるを得なかったが、戦前などでは天然痘などが流行した時に、骨葬が行われたケースもあったと聞く。

故人と最後の対面ができなかった遺族は、なかなか心の整理がつけられるものではないだろう。ぜひとも、コロナの流行が収まったのちに盛大に志村さんのお別れの会を開いていただきたいと思う。葬儀こそが、遺族の後悔や悲しみを癒やしてくれる唯一の手段なのだから。

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