新型コロナウイルス感染拡大の影響により、日本全国の「祭り」が続々と中止・延期になっている。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は「7月の京都の祇園祭もハイライトの山鉾巡行が中止になりましたが、宗教儀式の神事は実施します。なぜなら、そもそもの祭りの目的が疫病退散だからです」という——。
祇園祭前祭/山鉾巡行で辻回しする月鉾と後続の山鉾=京都府
写真=アフロ
祇園祭前祭/山鉾巡行で辻回しする月鉾と後続の山鉾=京都府

「コロナってゆうても祇園祭だけは、やめるわけにはいきまへんやろ」

新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの「祭り」が中止に追い込まれている。

春は豊饒ほうじょうを祈り、災厄を回避させる祭りが各地で開催されるシーズンにあたる。だが、緊急事態宣言の発出後は続々と中止が発表されてきている。

その一方、宗教儀式である祭事のみを非公開で実施するなど、祭りを「死守」する動きも見られる。祭りは庶民の知恵の結集そのものであり、コロナ終息後の地域経済復活のカギを握っているといっても過言ではない。本稿では全国の祭りの中止・延期の概況とともに、疫病と祭りとの関係性についても論じたい。

例年7月に京都で行われる日本三大祭りのひとつ、祇園祭。ハイライトの山鉾巡行が4月20日、中止されると発表され、多くの京都市民がため息をついた。

「いくらコロナってゆうても祇園祭だけは、やめるわけにはいきまへんやろ」

このところ、京都市民の間では、こんな会話がしばしば交わされていたからだ。他県の人から見れば、このコロナ騒ぎの最中に何十万人もの人々が集結する祭りの開催について議論する余地などない、と思うことだろう。しかし、祇園祭に限っては「コロナウイルスが蔓延しているからこそ、やらないわけにはいかない」理由があったのだ。