「教会で新型コロナ集団感染」させたカリスマ教祖の“罪”
世界各地へ広がりをみせる新型コロナウイルス。アジアで脅威にさらされているのは特に中国、日本、韓国だ。このうち韓国では宗教団体が感染拡大の火種を作ったとして問題視されている。
その教団とはキリスト教系の新宗教団体「新天地イエス教証しの幕屋聖殿」だ。設立は1984年で、信者数は21万5000人。教祖である李萬煕(イ・マニ)氏が絶対的指導者として君臨している。
感染源は、韓国第三の都市・大邱(テグ)の教会と言われている。新天地イエス教会は毎週日曜日と水曜日に、多数の信者を集めて礼拝を行う。礼拝は、信者同士が触れ合うほどの密着度だったという。さらに、信者が各地の教会を巡礼することが日常化しており、連鎖的に感染が拡大していったようである。
殺人罪で刑事告発されるとテレビカメラの前で土下座謝罪
日本の伝統仏教の場合も、礼拝や巡礼を伴う儀式は確かにある。だが、良くも悪くも檀信徒への強制力・団結力が弱いので、数千人単位の信者が一堂に会する機会はめったにない。仮に、このコロナ騒ぎの渦中にあって、どこかの宗派が集団儀式をやろうとしても、檀信徒のほうから拒否反応が出るであろう。
カルト教団にありがちだが、新天地イエス教会は一般社会や他宗教に対して強い排他性を示していた。このためか、当初、新型コロナウイルス検査にも非協力的であった。「だれが信者なのか」を知られたくなかったのだ。
行政は教会の閉鎖命令などを出したが、当初、教祖の李萬煕氏はSNSなどを通じて「われわれが急成長しているのを悪魔が阻止しようとして、今回の新型コロナウイルスの蔓延が起きている」などと、独自の主張を繰り広げた。
だが、教祖が殺人罪でソウル市から刑事告発されると態度を一転させる。テレビカメラの前で土下座して謝罪。また、コロナウイルス対策のために、大邱市社会福祉共同募金会に120億ウォン(約10億7000万円)の寄付を申し出た。大邱市はこの寄付を拒否しているという。
新天地イエス教会のニュースは、韓国社会の混乱の事例として、日本のテレビでは興味本位で取り上げられているようだ。しかし、伝染病と宗教との関わりは、日本においても深遠だ。むしろ日本では、伝染病との戦いがこそが、仏教や神道を興隆させたといって過言ではない。