新型コロナウイルスの対応をめぐって、安倍首相が記者会見を繰り返している。それに対して批判の声が多い。どこに問題があるのか。コミュニケーションストラテジストの岡本純子氏は「布マスクを付けた記者会見は大失敗だった。まずは見た目を意識してほしい。そのうえで血の通った言葉遣いに変えるべきだ」という——。
2020年4月6日、新型ウイルス肺炎が世界で流行 安倍首相、緊急事態宣言を発令へ
写真=ロイター/アフロ
2020年4月6日、新型ウイルス肺炎が世界で流行 安倍首相、緊急事態宣言を発令へ

アベノマスク=給食マスクで世界に嗤われてしまった安倍首相

人呼んで「アベノマスク」。安倍晋三首相が4月1日に発表した新型コロナウイルス対策の施策「1世帯2枚の布マスク配布」が波紋を広げている。

施策の内容にも問題はあるが、筆者は「発表の仕方」に問題があったと思う。一言でいえば、それは「官僚式」そのものだった。血が通っておらず、大局観に欠けている。国会ではそれで間に合うかもしれないが、「国民向け」には不適格だ。

新聞各紙は7日にも緊急事態宣言が出される見込みだと報じている。その今こそ、首相として望ましいコミュニケーションとはどんなものなのか。今回、リーダーシップコミュニケーションの「7カ条」を提案したい。

1.見出しが9割と心得る

今回のマスク施策は、医療機関への配布を優先させるためには理解できる面もあった。しかし、クローズアップされたのは「布マスク2枚」ばかりだった。

一部では「メディアの切り取り」と批判する声もあったが、これは発信側の戦略ミスである。100言おうが200言おうが、相手が受け止めるメッセージは1つか2つ。聞き手の記憶には残るのは、最も目立ち、ニュース性のあるメッセージ、つまり「見出し」になる要素だけなのだ。

あの日の首相の発言は、誰が聞いても、「布マスク2枚」に注目してしまうだろう。なぜ布なのか、なぜ2枚なのか、その費用に見合うのか。そうした疑問が次々と浮かんでしまう。

コミュニケーションの肝は「自分が何を言うか」ではない。「相手が何を聞くか」である。情報発信のプロであれば、大局観をもって「見出し」を先読みする想像力、自分の望むメッセージを聞き手の脳裏に焼き付ける戦略が必要なのだ。安倍首相およびそのブレーンは何をしているのだろうか。