「辞める」か「染まる」か「変える」か

NTT東日本ビジネス開発本部 第四部門 コラボレーション担当の山本将裕さん。2015年、NTTグループを横断する有志組織「O‐Den」を立ち上げる。2016年大企業中堅若手有志団体「ONE JAPAN」共同発起人となる。

“社外活動”の一環で参加したあるイベントに登壇していたのが、「One Panasonic(ワンパナソニック)」という若手の有志団体を社内に立ち上げて交流会や勉強会などの活動を行っていたパナソニック(当時)の濱松誠氏だった。

「仕事はもっと楽しくできる。若手でもたくさん集まれば、会社に働きかけることができるという話が衝撃的でした」

大企業では、社員同士が部署を超えてつながるだけでも大きな価値がある。特殊なスキルがなくても、社内の人との関わりを増やすための懇親会を企画することならできる。すぐにでも始められる。大企業がもつ閉塞感、自分の無力さへの怒りのあまりくすぶっていた気持ちが、再び前を向いて大きく動き出したのは、このときだった。

「会社を『辞める』か『染まる』か『変える』か、という濱松さんの言葉が決定打でした」

その日の夜に山本さんが書き上げたのが、のちにNTTグループ全体に横串を通すほどにまで発展する「O-Den(おでん)」という「ゆるくつながる」ための活動の原案となる企画書だった。

「最近、ワクワク働いていますか?」

「O-Den(おでん)」という名前は「One電電」をもじったもので、「en」には「縁」、「-」には「横串」の意味が込められている。

特別なビジョンやコンセプトは決めずに、「ゆるくつながって前向きな話をする」ための草の根飲み会からのスタートだ。NTTには約1000社のグループ会社があり、28万人が働いている。「まずは、会社内の誰かとつながるだけでもいい」――自ら声をかけて集めた初回の参加者は9人だった。山本さんは、「O-Den」の活動への参加を呼び掛ける際に、いつもこの言葉を投げかけるという。

「最近、ワクワク働いていますか?」

どうせ仕事をするなら、ワクワク働きたい。そのための仲間をつくりたい。それが「O-Den」の活動の目指すものだ。

社内のメーリングリストを使って「興味のある人は誰でも参加してください」というメンバーの募り方も可能ではあったが、あえてそうしなかった。最初は山本さんが1人ひとりに声をかけ、地道にふやしていった。そのうちにメンバーの口コミでも参加者は増え続け、最近では一回のイベントで50~100人が集まるほどにまで拡大している。

山本さんは彼らを「くすぶっている若手、モチベーション高い人、イカレてる人の集団」と表現する。