中国の宇宙開発予算は欧州をはるかに超える

中国は、両弾一星政策に基づきロケットと人工衛星の開発に成功し、経済的な発展を受けて軍事的な開発の成功を民生用に転化させ、世界で3番目となる有人宇宙飛行技術を有するに至った。現在の経済発展や宇宙開発への投資拡大が今後も続けば、欧州を凌駕して米国に近づくことも想定される。

中国の宇宙開発の特徴は、軍事的な開発利用が前面にあることであろう。現在の中国の宇宙開発を支える中心的な部局は、人民解放軍の装備などの技術開発を進める国務院の「国家国防科技工業局」である。ここがロケットや衛星にかかわる政策を立案し、政府の予算を確保している。この部局の下に、ロケットや衛星の開発・製造を担当する「中国航天科技集団有限公司」と「中国航天科工集団有限公司」があり、いずれも十数万人の職員を擁する巨大な国営軍需企業である。

これとは別に、人民解放軍がロケットの打ち上げ基地の運営や衛星追跡などを行っており、また宇宙飛行士も全て人民解放軍の兵士である。外交面での宇宙開発の貢献も大きく、例えば協力国の宇宙飛行士養成訓練や宇宙利用の援助などを行い、一帯一路政策に対する強力なサポートとなっている。

米国の宇宙財団(Space Foundation)発行の「宇宙報告書2017(The Space Report 2017)」で2017年の各国宇宙開発予算を見ると、米国約4兆7000億円、欧州(ESA)約6200億円、中国約4600億円、日本約3400億円、ロシア約1700億円となっている(ドルベースの元データを円換算している)。米国は国防総省とNASAを含む政府全体の額であり、中国は国防予算が含まれていない。

中国の宇宙開発が人民解放軍に深く依存していることや、国防予算が急激に増大していることを考慮すると、中国は欧州をはるかに超える額を宇宙開発に投入している可能性が高い。