日本のエネルギー政策はなにを核にするべきなのか。太陽光などの再生可能エネルギーか、それとも原子力発電か。慶應義塾大学大学院経営管理研究科の太田康広教授は「日本が進めるべきなのは石炭火力発電だ。以前に比べて高効率でクリーンになっており、発生する二酸化炭素を地中に埋める技術もほぼ確立している。日本政府はこの事実を世界に発信するべきだ」という――。
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世界的な「脱石炭」の潮流

COP25(第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議)で、国連のグテーレス事務総長が「脱石炭」の流れを作り、石炭火力発電の多いアメリカ、日本、オーストラリアが「化石賞」というジョークで非難された。金融の分野でも環境・社会・ガバナンスに配慮したESG投資の動きが拡がり、CO2排出量の多いプロジェクトは融資を受けにくくなってきている。

こうした脱石炭の流れは、地球温暖化を心配する純粋な人だけでなく、自分の利益を増やそうとする人にも支持されている。たとえば、再生可能エネルギー事業者はFIT(固定価格買い取り制度)や補助金などの優遇策をできるだけ長く受けるために、石炭火力発電を減らしてもらうのが都合がよい。石油産業やガス産業は、石炭火力発電を減らすことに賛成である。

しかし、それでも日本が石炭火力を推進すべき理由がある。(1)エネルギー安全保障上、石炭が重要であること、(2)日本の石炭火力は安いこと、(3)日本の石炭火力は効率がよいので国際展開すれば温暖化対策になること、(4)日本の石炭火力はクリーンであること、そして(5)CO2を分離して、地中や海底に貯蔵する技術が実用化間近であること、である。