石油は9割弱を中東に依存している

(理由1)エネルギー安全保障上、石炭が重要である

2020年1月3日に、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官が米軍の無人機によって殺害された。中東で緊張が高まった結果、原油価格は急騰している。WTI原油先物価格は1月2日の1バレル61.18米ドルから、1月7日は63.28米ドルに跳ね上がった。アジア市場の指標となるドバイ原油も同じ傾向で、スポット価格も年末27日の1バレル67.90米ドルに対し、年初1月8日は69.10米ドルとなっている。

日本は、原油のほぼすべてを輸入している。2017年の石油、ガス、石炭の輸入元は次のグラフのとおりである。

情勢不安のホルムズ海峡が「生命線」

中東から輸入される原油の多くは海上輸送の難所、ホルムズ海峡を通過する。ホルムズ海峡は、ペルシア湾とオマーン湾のあいだの海峡で、北にイラン、南にオマーンの飛び地がある。水深は100m以下、幅は33km程度である。船舶の衝突を避けるために幅3km程度の航行レーンが設定されている。ここは世界でもっとも重要な難所で、1日に2100万バレル(2018年)もの原油が運ばれている

ホルムズ海峡
出典:wikipedia.org

とくに中東からアジアへ輸出される原油の多くはここを通る。資源エネルギー庁によれば、日本の石油輸入の2017年の中東依存度は86.9%で、ホルムズ依存度は85.9%である。米イランの対立の結果、ホルムズ海峡が封鎖されれば日本の被害は大きい。ホルムズ海峡を迂回するパイプラインも敷設されているものの、運搬できる量は限られている。

ただ、日本は、石油ショックの反省の上に立って石油の備蓄をしているので、ホルムズ海峡が封鎖されてもただちに石油不足になるわけではない。2017年3月末現在、国家備蓄と民間備蓄などを合わせた備蓄は8104万klあり、これは208日分に相当するという

ホルムズ依存度は85.9%なので、ホルムズ海峡封鎖後242日は備蓄でしのげる計算である。逆にいえば、ホルムズ海峡が封鎖されたら、242日以内に何かほかの方法を考えないといけない。242日は8カ月ちょっとである。