原発を温暖化対策の切り札にするのは難しい

CO2を出さない発電方法として原子力発電(原発)がある。そして、原発のコストは安い。最近、原発は高コストといわれることがあるのは、福島第一原発事故以降の安全対策コストを加えているからである。安全性の確認された原発を再稼働するのがエネルギー安全保障上は望ましいが、それが現実的かどうかについては人によって意見が違う。

結局のところ、原子力工学的に原発を安全にできたとしても、安全になったということを一般の人にうまく伝えられないのがネックである。原発の安全性を確かめて、安全なものは再稼働するようにこれからも頑張るとしても、温暖化対策の切り札にするのは難しくなってしまった。

安全保障上プラスとなる自然エネルギー

温暖化対策において注目されるのは自然エネルギーである。自然エネルギーにはいろいろな種類があるが、水力発電と太陽光発電で8割超を占める。2018年の発電量(自家消費を含む)に占める割合は水力が7.8%、太陽光が6.5%である

自然エネルギーは基本的に国産なので、エネルギー受給率の向上に役立つ。これは、エネルギー安全保障上はプラスである。

しかし、太陽光発電は日が照っていないと発電できず、風力発電も風がやむと発電できない。日が陰ったり風がやんだりするだけで発電量が大きく落ちるので、バックアップとして火力発電設備が必要とされる。また、日中の出力が大きく変動するので、送配電網の負担も大きい。水力発電はこの点柔軟で、太陽光や風力の変動を相殺するように運用することで、電力供給のフラット化に役立っている。

太陽光などの自然エネルギーはFIT(固定価格買い取り制度)により電気の買い取り価格が高めに設定されているために、採算が取りやすくなっている上、フラット化に必要とされるコストを支払っていない。FITを維持するとドイツのように電気料金が高くなってしまうのでいつかはやめる必要があるが、そのタイミングをいつにするかという問題がある。

自然エネルギーの限界

長い目で見ると、揚水発電や蓄電池など、フラット化のコストを再生可能エネルギー業者に負担してもらう必要がある。ただし、送配電業者がフラット化のための設備投資をすると非効率になるので、フラット化も自由化したほうがいいかもしれない。

具体的には、ダイナミックプライシングを採用するのがいいのではないか。日中のタイミングによって電力価格が変動すれば、安い時間に買って高い時間に売る鞘取り業者が出てくる。鞘取り業者が電力価格とフラット化コストを睨んで自分の才覚で利益を出そうとすれば、少ないコストでフラット化が達成できそうである。

ただし、水力まで含めた自然エネルギーの比率は自家消費分を含めても17.4%である。予想可能な近い将来、自然エネルギーが火力発電に取って代わることは考えにくい。