日本の食料自給率は本当に低いのか。拓殖大学国際学部教授の竹下正哲氏は「日本の食料自給率は38%とされているが、これは日本独自の『カロリーベース』だ。諸外国の使う『生産額ベース』では66%で決して低くない。世界でこんな奇妙な計算方法を採用している国は一つもない」という――。

※本稿は、竹下正哲『日本を救う未来の農業』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。

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「食料自給率が低くて危ない」の大嘘

日本人は「農業問題」と聞けば、まっ先に「食料自給率」を思い浮かべるだろう。そのような教育を小学生の頃からされている。「日本は食料自給率が低くて危ないね」と授業の中で教えられる。農林水産省の発表によると、最新2017年の食料自給率は38%となっている。

38%とは、確かに大問題ではないだろうか。つまり62%の食料は、海外に頼っていることになる。そんな状況で、もし戦争が起きて、食料を輸入できなくなったら、国民の62%は飢え死にしてしまうのではないか、と恐ろしくなってしまう数値だ。

そう、38%という数値だけを見ると、「日本の食料は危ないんじゃないか」と不安になってしまうのは無理もない。だが、この38%とはいったいどうやって計算されているのか、しっかり吟味してみると、まったく違った意味が見えてくる。

現実を見てみよう。スーパーの野菜売り場に行って、野菜や果物を見てほしい。いったい何割が国産で、何割が外国産だろうか。本当に38%しか国産がないだろうか。確かに外国産のものもいくつかはある。

でも、決して多くはないはずだ。みなさんが夕飯の材料として買っている野菜も、ほとんどが国産のはずだ。実際、スーパーの野菜売り場の7~8割ぐらいは国産だと思われる。なのに、なぜ自給率は38%とあまりに低い値なのだろうか。