それは、牛が食べている餌が、アメリカ産のトウモロコシだからだ。食べている餌が外国産なら、その肉も外国産という計算になってしまっている。つまり、和牛農家ががんばればがんばるほど、日本の自給率は下がるという仕組みだ。

しかも、肉だけじゃない。牛乳も卵もすべてそうなのだ。みなさんは、外国産の牛乳を飲んだことなんてあるだろうか。あるいは外国産の卵を買ったことがあるだろうか。おそらく一度もないだろう。しかし、日本の自給率を計算してみると、驚いたことに牛乳の74%、卵の88%が外国産ということになっている。

我々が毎日食している牛乳と卵は、ほぼ外国産らしいのだ。その理由は、先ほどと同じように、餌が外国産のためだ。こんな餌にまでさかのぼって自給率を計算している国なんて、世界中探しても、他にどこにもない。

食料自給率50%すら夢のまた夢

こういった不思議なからくりがあるおかげで、日本の食料自給率は38%と低い値になっている。実は、このカロリーベースという奇妙な計算方法をとっている限り、食料自給率が上がることは決してない。

もし日本の耕作放棄地や休耕田をフルに活用して、最大限に農業生産を高めたとしても、50%に届くことはないだろう。70%や80%になることは、絶対にない。そういう計算方法になっているのだ。では、なぜ日本はわざわざ牛や豚の餌にまでさかのぼって計算しようとするのだろうか。それは、もちろん食糧安全保障のためだろう。

つまり、外国産の餌を食べている牛や豚は、いくら日本で育てられていようとも、もし戦争とかが起きて、それらの餌を輸入できなくなってしまえば、すぐに死ぬことになる。そんな頼りない存在を、自給率の中で「国産」として扱うことはできない。そういう理論だろう。

確かにその考え方にも一理ある。しかし、そんなことを言い出したら、きりがない。もし餌にまでさかのぼろうとするのなら、実はコメにしても、野菜にしても、あらゆる農産物を「国産」から除外しなくてはならなくなる。

というのも、コメも野菜も種をまけば勝手に育つ、というものではない。当然肥料が必要になる。農薬も必要になる。では、肥料や農薬とはどこから手に入れているのだろうか。