「カロリーベース」という不思議な計算方法
その秘密は、自給率の計算方法にある。日本の食料自給率は、「カロリーベース」という不思議な計算方法がとられている。カロリーベース自給率というのは、日本が発明した計算方法で、世界でこんな奇妙な計算方法を採用している国は一つもない。
農林水産省によると、FAO(国連食糧農業機関)、スイス、ノルウェー、韓国、台湾がカロリーベース食料自給率を公表しているとしているが、それらの計算方法は、日本のものとは異なっている。またそもそも「食料自給率」という概念に、これほどこだわっているのも、日本だけである。
では、日本式カロリーベース自給率とはいったい何かというと、野菜とかお肉とか牛乳とか、食べ物すべてを熱量(カロリー)に置きかえて、その全体カロリーのうち何割が国産かを示したものだ。このカロリー自給率を用いると、日本の自給率はとたんに低くなる。そのからくりは、大きく二つある。
一つは、すべてをカロリーに置きかえて計算しているということ。それがどういうことかというと、野菜や果物は、自給率にほとんど関係しなくなることを意味している。なぜなら、野菜や果物はカロリーが低いからだ。野菜が増えようが減ろうが、カロリーに換算してしまえば、微々たる増減でしかない。
和牛農家ががんばるほど、日本の自給率は下がる
農家ががんばってたくさんの野菜を生産すれば、日本の自給率は上がるように思える。でも、それは間違いで、38%の数値は1%もあがらない。ホウレンソウなんて、100gで18kcalぐらいしかない。つまり、カロリーで計算している限り、いくら国産野菜を増やそうが、そんなことはほとんどまったく数値に反映されてこないのだ。
では、何がカロリーベース自給率で効いてくるかというと、当然カロリーの大きなものということになり、それは肉とか油とか小麦とか砂糖とかいうものになる。そうなると、日本は油、小麦、砂糖の7~9割を輸入しているので、当然自給率ががくんと落ちることになる。
さらには、二つ目のからくりがある。実は日本のカロリーベース自給率では、和牛は日本産にカウントされていない。和牛とは名前の通り日本で育てられた牛のことだが、実は外国産として計算されている。その理由がわかるだろうか。