カロリーベース食料自給率を発明した理由

なぜ日本はカロリーベース自給率という奇妙な計算方法を発明したのだろうか。その理由で一番大きなものは、海外へのアピールだったと考えられる。というのも、カロリーベース食料自給率の計算方法が発明されたのは1987年。国際的には、ガット・ウルグアイラウンド(GATT Uruguay Round)がその前年の1986年から始まっている。

竹下正哲『日本を救う未来の農業』(ちくま新書)

その国際交渉の中で、日本は世界中から責め立てられていた。「農作物に対する関税を撤廃しなさい」と。でも、日本は断固としてそうしたくはなかった。「コメを一粒たりとも日本に入れるな」というのが、当時の日本のスローガンだった。

そこで発明されたのが、カロリーベース自給率だ。目的は、日本の農業がいかに弱いかを世界にアピールすること。「世界のみなさん、見てください。日本の自給率はこんなに低いんです。これで関税をなくして開国したら、日本の農業は滅びてしまいます。それだけは勘弁してください」と言うためだ。

そうやって日本は、自分たちの農業がいかに弱いかを海外に訴えることで、かたくなに関税を維持しようとしてきた。それは、日本人の目から見ると普通に思えるかもしれないが、国際社会から見ると、たいへん身勝手な行動と映ってしまっている。

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