主役である現場の社員が情熱を持って自発的に仕事に取り組む環境をつくるには、組織のフラット化を追求すると同時に“管理しない”仕組みを醸成することが重要だ。同社はどんなに社員が増えても、部門内の階層を無闇に増やさないようにしている。そうなると一人のマネジャーが面倒を見る部下が増える。実際に30~50人を抱えるマネジャーもいる。細かく管理できないことが、結果的に部下の自主性を促すのだ。
もう一つは上司の特権であった情報の独占の排除だ。イントラネット上には経営会議の内容から進行中のプロジェクトの中身にいたるまで、あらゆる情報が全社員に開示され、誰もが閲覧できる。したがって上司が情報管理によって部下を無理やりコントロールすることはできない。また、管理職の権限で部下に「いつまでにこれをやれ」という指示もさせない、というより、できない構造にすることで社員の自由度を担保している。
当然、社員にも自ら動いて成果を挙げるという能動性が要求される。上司の指示を待つ社員は必要とされない。それを象徴するのが同社のエリック・シュミットCEOの「If you want complete order, join the Marines」(一からすべて命令してほしいなら、海兵隊に行けばいい)という言葉だ。
「上司のジョブオーダーがないので、自分からネットワーキングして情報を取りにいくなどして仕事を進めることが求められるし、そういう人が一番生きる会社です。逆に上司の指示がないと動けない、階層のカベをぶち壊して自分の領域を広げられない人には、よい仕事はできません」(吉田部長)
社員には、職務記述書に記されるような明確なタスクは存在しない。特定の仕事に従事する人ももちろんいるが、様々なプロジェクトにまたがって仕事をするケースのほうが多い。検索エンジンの品質向上チームや地理情報チームにいても他のプロジェクトチームを掛け持ちするエンジニアもいるし、一つのチームが複数の拠点にまたがる場合もある。