マネジャーは部下を管理しないと述べたが、部下がそれぞれ勝手な方向に動き出せば収拾がつかなくなる事態も予想される。ではマネジャーの役割とは何か。吉田部長は「部下の考え方を聞きながら、仕事をコーディネートする指揮者のような役割に徹する。部下は自ら腑に落ちなければ自発的には動けない。マネジャーには、部下がリスクを取って仕事にチャレンジするための潤滑油的役割が求められている」と指摘する。

管理せず、仕事の指示・命令も出すことはないが、それでいて自分が担当する部門の結果は求められるマネジャーの仕事というのは、決して容易ではないだろう。部下一人ひとりのやりたいことについて、じっくり耳を傾けながら、創造性が発揮できる仕事を部下自ら見つけられるように導いていく。同時に会社のベクトルやチーム戦略の方向性を指し示し、全員の合意を得る努力も必要である。

管理職の役割は組織を常に活性化させること

さらに仕事の進捗状況を常にチェックし、改善のためのフィードバックを日常的に行わなければならない。同社では四半期ごとに目標に対する評価面談を実施し、新たな目標を設定する。しかし、実際はやっている仕事が1カ月で陳腐化する可能性もあり、ほとんどのマネジャーは1カ月単位でチェックしているという。

加えて、直属の上司と部下が週1回程度「One on One(ワン・オン・ワン)」と呼ぶ30分程度の面談を行っている。上司はそこで部下が現在どんな仕事をしているかを把握し、必要に応じてアドバイスする。「“ニコポン上司”ではまったく通用しない」(吉田部長)。

マネジャー以上の役職者は組織を活性化することが常に求められている。年に1回、グローバル規模の社員意識調査を実施しているが、マネジャーやディレクターをはじめ役員やトップも調査の対象になる。