土俵際の菅直人首相にとって、もはや伸子夫人のほかに頼れる人はいないようだ。首相は政治家らとの夜の会合に頻繁に夫人を同席させているが、全国紙の官邸詰め記者は「こんな首相は歴代で初めてだ」と呆れ顔で語る。

「世論や党内外の菅批判が強まる中、伸子夫人の存在は首相の“精神安定剤”のようなもの。伸子夫人は『菅がイライラする人には、私もイライラしてくる。菅がイラつくのが理解できてしまう』と自著で書いている。夫人の同席は“イラ菅”の爆発をブロックするためでしょう」

首相は2月10日に官邸近くのホテル内の中華料理屋で伸子夫人ら家族10人と夕食をとったが、2月3日の辻元清美衆院議員や3月1日の馬淵澄夫・党広報委員長のような政治家との会合にもたびたび、伸子夫人を同席させている。

「夫人以外では、首相が信頼を置くブレーンの五十嵐敬喜法大教授と頻繁に夕食をとっている。一方、昼食は官邸で一人でとることが多く“引き籠もり”のように報じられた。ある首相補佐官は“一人じゃない。首相秘書官も一緒だ”と反論したが、秘書官は身内で首相の言いなり。耳の痛い情報は入らず、首相の『裸の王様』状態に変わりはない」(同前)

予算成立が絶望視されているときに、菅首相は「予算関連法案が成立しないと世論の批判は反対した野党に向かう。野党は妥協せざるをえない」と根拠のない見通しを語り、事態打開の手立てをまるで打たぬまま袋小路に追い込まれた。

もともと一匹狼的な傾向の強い菅首相には側近がいない。女房役の枝野幸男官房長官ですら「個人的に菅さんと親しいわけではない。官房長官の仕事として菅さんを支えている」と周辺に漏らすほど。

「小沢一郎元代表グループの造反により分裂含みの民主党では、こんなジョークが流行っている。『民主党は小沢を中心とする民主党Aと反小沢の民主党B、そして菅氏の“一人民主党”に割れる』。首相と行動を共にする議員は一人もいないということ」(民主党幹部)『あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの』。菅政権誕生直後に伸子夫人が出版した本のタイトルだが、政権交代で政治はさらに混迷を深めた。国民は菅政権に心底失望している。