窮地の菅民主党だが、このまま菅直人首相がマニフェストを自民党案と同一化し、直後に解散・総選挙を狙っているとすれば、水面下で進む政界再編の形も見えてくる。小沢一郎元代表の勢力が河村たかし名古屋市長らの「減税日本」と連携して地方分権連合の糾合に成功すれば、統一地方選直前の新党旗揚げもありうるが、その成否は勝ち馬を見極めようとする自治体や各議連への根回しがどこまで成功するかにかかっている。

目前の統一地方選とその先の解散・総選挙による政界再編は、菅政権の宿題である消費税、TPP、普天間基地という3つの問題の選択・決裁を前提に交渉され、組み上げられる。消費税は内政、TPPは対アジア太平洋諸国だが、普天間に関しては米国との二国間問題だ。戦後の歴代政権は米国の意向・動向に事実上左右されてきたとされる。前述の政界再編を底流で決するのは、表面上はともかく、結局は在沖米海兵隊が象徴する米軍基地問題への対応ということになる。

膨大な財政赤字に苦しむ米国内で1月下旬に行われた世論調査では、「在日米軍は撤退すべき」と半数の有権者が回答。それ以降、国内外に注目すべき発言が続出した。沖縄“蔑視”発言とは別に、日米双方の政治家らが、“在日米軍削減論”と言っていい言葉を口にし始めたのだ。

鳩山由紀夫前首相が2月13日付沖縄タイムスのインタビューで「“抑止力”発言は単なる方便」と発言。続いて共和党と民主党の有力議員が共同通信の取材で、在沖米軍どころか「在日米軍の“抑止力”は単なる口実だ」と、日米安保の根幹を揺るがすような大胆発言を(同15日付)。16日にはゲーツ米国防長官が「普天間問題は今春末までに解決を。それが他の基地を返還する前提条件」と菅政権を“恫喝”したが、知日派のコロンビア大学教授、ジェラルド・カーティス氏は、22日に都内で開かれた日米要人の会合に提出した論文に、「辺野古移転は無謀」「在沖米軍を削減すべき」と記した。

こうした中で、目白押しの選挙日程が迫る。民主・自民の政策上の境界が消えれば、「(極東における米軍は)第七艦隊で十分」とする小沢勢&地方分権連合との対立軸がはっきりしそうだ。日米関係と政界再編の深層に澱み続けた「抑止力」論議は、日米改定安保の本質にまで遡っての検証が必須な段階に入りつつある。