レオナルド・ダ・ヴィンチは、優れた科学者
(モナ・リザ)で知られるレオナルド・ダ・ヴィンチは、優れた科学者でもありました。科学とアートには「直感」や「ひらめき」「ビジョン」といった、同じような思考が求められ、それらはイメージを媒介することが多いのです。
アートと科学の親和性が高いという事実は、アメリカで実際にアートを利用して科学を視覚的に捉え、共感してもらえるような形で伝える試みが始まっていることからもわかります。鑑賞者に直感的、感情的な反応をもたらして、言葉では説明しきれないアイデアでもアートを使うことで言葉よりも正しく伝達できるだけでなく、記憶にも残りやすいことがわかったためです。
創造性の研究を専門とする心理学者ミハイ・チクセントミハイの著書『クリエイティヴィティ――フロー体験と創造性の心理学』(世界思想社)の中に次のような記述を見つけました。
「私たちの多くは、音楽家、作家、詩人、画家といった芸術家たちは空想的な側面が強く、科学者、政治家、経営者たちは現実主義者であると、当然のように思っている。日常的な活動に関しては、これが真実なのかもしれない。しかし、人が創造的な仕事を始めると、すべてが白紙に戻ってしまう――芸術家は物理学者と同じくらい現実主義者となり、物理学者は芸術家と同じくらい創造的になり得るのである」
科学者には芸術家のような創造的な才能が必要で、芸術家にもまた科学者のような現実主義的な視点が必要なのです。この両方を使えるのが、真の科学者であり、真のアーティストであるといえます。
「問い」を見つけるセンスの養い方
では、「問い」を見つけるセンスは、どう養っていけばいいのか。
最初にするべきことは、あなたの曇った目を取り除くことです。
私たちは自らを取り巻く外界を正しく理解していると思っていますが、まずそれが間違いであると気づく必要があります。それは、あなたが「見ている」と思い込んでいるものは、「本当に見ているもの」ではない可能性が高いからです。少なくとも何物にも影響を受けていない裸眼で見ているわけではないのです。
例えば、美術史を学ぶと、人類は目に見える世界を捉えるために様々な認識パターンを「発明」してきたことがわかります。点、線、面、円、四角形、三角形は、人間が発明した幾何学的な図形で、人はこれらを利用して世界を視覚的に把握しているのです。
また輪郭線、陰影法、遠近法という技法を使い、本物らしく物や人を写し出しています。空間把握を行うための概念も同様で、すべて視覚認識のために人間が発明した認識パターンなのです。それは「実際に自然界において、これらの形態が存在していない」ことからも理解できます。