組織にアートを採り入れる日本企業が増えてきた。そのうちANAは2017年から社員を対象に「西洋美術の楽しみ」というセミナーを開いている。『アート思考』(プレジデント社)の著者で東京藝大美術館長の秋元雄史氏は「アートとビジネスは深部で響き合う」という――。(第3回/全5回)

※本稿は、秋元雄史『アート思考』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

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アートを学んだアップル、Airbnb、スクエアの創業者

アメリカのビジネスシーンでアートに注目が集まった理由は、シリコンバレーなどで新たなビジネスを生み出して、成功を遂げてきた人々の多くがアートの素養を持ち合わせていたことと無関係ではありません。

アップルの創業者スティーブ・ジョブズは、文字のアート、カリグラフィーを学んでいたことで知られています。旧米ヤフー(現アルタバ)の元CEO、マリッサ・メイヤーが影響を受けたのは、画家である母親でした。

Airbnb(エアービーアンドビー)の創業者の一人、ジョー・ゲビアも学生時代にアートを勉強し、アクションカメラをヒットさせたGoPro(ゴープロ)の創業者、ニック・ウッドマンも視覚芸術を学んでいました。

スクエアを2009年の創業からわずか10年で時価総額200億ドル超に成長させたジム・マッケルビーにいたっては、自らがガラス工芸などを手がけるアーティストでもあり、彼のデザインしたスクエア・リーダーはMoMA(ニューヨーク近代美術館)にも展示されています。

そうしたイノベーターたちが共通してアートをたしなんでいたため、アートとビジネスの関係が指摘されるようになったのです。