体への負担の軽い内視鏡手術も

椎間板ヘルニアは働き盛りの若い世代、とりわけ男性に多いのが特徴。建設業や運送業など腰を酷使する職業の人に多発することが知られていますが、デスクワークが長くても腰に負担をかける姿勢を取っている人はなりやすいといえます。

椎間板ヘルニアには前屈姿勢を取ったとき、すなわち前方へ背中を丸めたときに、痛みが強くなるといった特徴もあります。なぜなら、痛みを引き起こすヘルニアは椎間板の背中側にあるのですが、前屈すると椎間板が上下の椎骨に圧迫され、椎間板内部の圧が高まって、ヘルニアによる神経圧迫が強くなるからです。

椎間板へルニアの治療は現在、薬などで痛みを抑えながら、治癒を待つ保存療法がメーンとなっています。実は、ヘルニアの多くが、自然に縮小することがわかったからです。どういうことかといえば、炎症細胞の一種である「マクロファージ」や分解酵素によって、ヘルニアが縮小するのです。ヘルニアの70~90%は、3~6カ月以内に自然に縮小することが確かめられています。

薬物療法では、痛みやしびれを抑えるために、「プレガバリン」や「ミロガバリン」という神経障害性疼痛治療薬が処方されます。最近では、椎間板の水分を保持する力を低下させ、椎間板内圧を下げることによってヘルニアによる神経への圧迫を軽減させるという画期的な注射薬「コンドリアーゼ」が、普及しつつあります。保存療法の期間が、劇的に短縮されることが期待されます。

しかし、10~20%の患者さんは、保存療法では症状が改善しません。とりわけ、神経の幹の部分である「馬尾」が障害されている場合は、症状の進行を止め、神経機能の悪化を防ぐためにも、早い段階での手術をお勧めします。仕事の関係で早く症状を治したい場合も、手術がよく選ばれます。最近では、体への負担の軽い内視鏡手術も行われています。内視鏡手術の場合、入院期間は3~7日が普通。デスクワークなら、約1週間の自宅療養で職場復帰できます。入院費は24万円(自己負担が3割の場合)が目安です。

(構成=野澤正毅)
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