「ワクチンは怖い」と子供の予防接種をためらう親がいる。小児科専門医として『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』(内外出版社)を書いた森戸やすみ氏と宮原篤氏は、「ワクチンのある感染症のほとんどには治療法がない。接種するリスクより、接種しないリスクのほうが高いことに気づいてほしい」と警鐘を鳴らす――。
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「ワクチンは怖い」と話す親たち

――今、予防接種の本を書かれたのは、なぜでしょうか?

【森戸】以前から診察室で「ワクチンは怖いので接種していないのですが……」とか「家族がワクチンの接種に反対しているので中止しようかと……」というような相談を受けていて、危機感を持っていました。どこからそういう情報がくるかというと、不正確な書籍やSNSですね。予防接種に関しての一般書には、医学的に不正確な「反ワクチン本」が多くて、普通の小児科医が正確でわかりやすい本を出したらいいのではないかと思いました。

【宮原】書籍やSNSからワクチン不信をあおる不正確な情報が広まっているのは日本だけでなく、世界中で同じです。今年1月にWHOが発表した「世界の健康に関する10の脅威」のひとつは、「ワクチンを躊躇すること」(※1)。2017~2018年にかけて、麻疹の患者数はウクライナで10倍以上、マダガスカルで27倍、フランスで4.6倍に増えました。今年は、すでに昨年を上回るペースです。日本もひとごとではありません。

来年は東京オリンピックが開催されます。さまざまな国から多くの人が日本にやってくることもあり、さらに感染症が広がるリスクがあるため、今こそみなさんにワクチンの接種歴を確認してほしいと思っています。

※1 https://www.who.int/emergencies/ten-threats-to-global-health-in-2019