狂気の投資を支えてきた孫氏の「眼力」
孫正義氏率いるソフトバンクグループ(SBG)の先行きに不透明感が強まっている。海外では米シェアオフィス「WeWork(ウィーワーク)」を運営するウィーカンパニーに約1兆円の追加支援を余儀なくされ、国内では子会社のヤフーがショッピング・サイト「LOHACO(ロハコ)」を運営するアスクルの社長と社外取締役を解任、ほぼ同時に前澤友作氏の持ち株を買い取ってファッション・サイトのZOZO(ゾゾ)を傘下に収めた。
ここ半年の出来事は一言で説明できる。「成長神話の限界」だ。
SBGの成長神話の源泉は、何と言っても孫正義氏の「眼力」である。1994年にソフトバンクの株式上場でキャピタル・ゲインを得た孫氏は、その金で米国のコンピューター展示会会社、コムデックスとコンピューター雑誌を得意とする出版社のジフデービスを買収する。2社の買収総額は3100億円で当時のソフトバンクの株式時価総額2700億円を超えていた。
金額的に狂気の投資であり、そもそもなぜ展示会会社と出版社なのか。インタビューで尋ねると、孫氏は不敵に笑ってこう言った。
「コムデックスとジフデービスはアメリカにおける僕の目であり耳なんですよ」
私がこの言葉の意味を理解したのは10年近く後だった。