両者とも器の小ささを感じさせ、ジェリー・ヤン氏やアリババ創業者のジャック・マー氏とは比べるべくもない。会社や経営者の可能性を見抜くことでは定評のあった孫氏の千里眼に衰えが見える。
損切りはできない、ならば立て直すしかない
これらの投資は「失敗」と言わざるを得ないが、SBGは見捨てない。10月、SBGはウィー株の追加取得や融資などで最大95億ドル(約1兆円)の支援を実施すると発表した。これにより発行済み株式の過半は取得するが、議決権ベースでは過半数はあえて握らず、連結子会社にはしない。
ウィーは、直近の2019年1月の資金調達ラウンドで470億ドルだった自社の評価額を、IPOにあたって100億ドルまで切り下げた。通常のベンチャー・キャピタルならこの手の失敗案件はサンクコストと割り切って株を売却する局面だ。しかしすでにウィーに72億ドル(7720億円)を出資してしまっているSBGがウィーを損切りすれば、巨額損失の計上を迫られる。
損切りはできないなら、立て直すしかない。ならば出資に見合った議決権を握って経営に介入すべきだが、ウィーは今の所、赤字会社であり、子会社化して連結対象になれば、その赤字がSBGの決算に反映される。それも困るから、今回のような「出資額は巨額なのに経営権は握らない」という中途半端な支援になったのではないだろうか。
短期かつ確実に「日銭」を稼ぐ会社が必要だ
Yahoo!やアリババのような「打ち出の小槌」が現れないとなると、マーケットの目は俄然、SBGが抱える15兆円の有利子負債に向く。低金利で調達した資金を成長分野に投資して利益が生み出せるなら、借金の大きさは問題にならない。しかし投資先が成長せず、利益が出ないとなると、話は別だ。一攫千金の夢物語に酔っていた投資家が、にわかに足元のキャッシュフローを気にし始める。
そこで問題になるのが、SBGの「日銭を稼ぐ力」である。
海外に目をやると、2016年に3兆4000億円で買収した半導体設計のARMはスマホで圧倒的なシェアを持つ。しかしSBG傘下になってからは開発投資を先行させ赤字が続いているとされる。
2013年に216億ドルで買収した米携帯4位のスプリントは3位Tモバイルとの合併が認められ、売却の目処がついた。売却で得られる資金は1兆3000億円と見られる。泥沼化していたスプリントから足抜けできるのは明るいニュースだが、海外で確実に期間利益を稼ぐ会社は見当たらない。
世界中で派手な投資を繰り広げるSBGだが、実は「日銭」という意味で頼りになるのは携帯電話事業の「ソフトバンク」と、ネット事業の「ヤフー」。いずれも国内の事業なのだ。