大好きなゲームをエサに勉強したくなる仕組みをつくろう

さらに松丸家では、子どもを勉強に向かわせる、おもしろいルールがあったという。

「僕は小学生の頃からゲームが大好きで、いつも夢中でプレイしていました。そうやってゲームばっかりしていると、『ゲームは1時間まで』と制限時間を設けられることが多いと思うのですが、うちはそうではありませんでした。代わりに『勉強を3時間やったら、好きなだけゲームしていい』というルールになっていたんです。ゲームを人質にとられて、勉強させられたかんじでしたが、これが僕にはあっていました」(松丸さん)

最初のうちは、なかなか3時間の勉強ができなかったという。しかし、やらないとゲームができないから、やるしかない。そうしているうちに成績が伸びていったのだとか。

「最初はゲームするために仕方なくやっていた勉強ですが、3時間を積み重ねるうちに楽しくなっていきました。『勉強ができない』→『楽しくない』→『だからやらない』のサイクルから、『(ゲームのために)やらないといけない』→『勉強ができるようになるから楽しい』→『楽しいからさらに勉強する』というサイクルに変わって、そこからは自分で勉強するようになりました」(松丸さん)

重要なのは、「仕組み」だ。これをうまくつくることができれば、子どもが大好きなゲームは勉強をがんばるきっかけにすることができるのだ。前出・藤本さんは「子どもの性格にあわせて、仕組みを考えるといいでしょう」という。

「飽きっぽい子なら、ゲームをやりすぎる心配はないので、宿題や課題を終えたらゲームの時間にしてあげる。逆にやりすぎる心配のある子なら、時間を決めて、たとえば宿題をやったら10分、お手伝いしたら10分、というように時間を加算していくようなルールにすると、やるべきことも終わるし、やりすぎも防ぐことができます。親御さんも、あの手、この手でお子さんにあったルールづくりを考えることを楽しんでほしいと思います」

情報収集力、判断力、行動力……ゲームで学べることもある

さらにゲームをすること、そのものにも優れた効果があると語る。

「ゲームでは、現実の世界ではできない貴重な経験をたくさんすることができるものもあります。それは、学びにもつながっているのです。たとえば、ストラテジーゲーム(戦略シミュレーションゲーム)では、情報収集力、素早く正確な判断力、戦略的な行動力などを養うことができます。チーム対戦ゲームでは、協調意識やコミュニケーション、協力スキルが高まります。ホラーゲームもプレッシャーの中で、緊張や不安に対処、恐怖、怒りの感情をコントロールする経験になっています」(藤本さん)

親はゲームばかりして、勉強しないわが子にイライラしがちだ。今年5月には世界保健機関(WHO)が「ゲーム障害」を依存症と認定したこと(※)もあり、「ゲームに埋没して、人生を台なしにしてしまうのではないか」と心配になり、ゲームを敵視する親は多い。

※2019年5月、WHOは、「ゲーム障害」を依存症として認定した「国際疾病分類」最新版を承認。アルコールやギャンブルなどの依存症と並んで治療が必要な疾病となった。ゲーム障害の定義は「オンラインゲームやテレビゲームをしたい衝動が抑えられなくなり、日常生活より優先する」「健康を害するなどの問題が起きてもゲームを続け、一層エスカレートしたりする」「家族や社会、学業、仕事に著しい障害がもたらされる」「こうした症状が12カ月以上続く」など。

だが、ゲームの世界で子供がどんな経験をしているのかは、親も一度、のぞいてみる必要があるかもしれない。そこで子供なりに挑戦したり、創造したり、貢献をしているのなら、前向きに評価すべきことだろう。そして、ハマりすぎが心配なら、現実の世界にもゲームに負けないくらい魅力的なイベントや旅などを企画して、親子で楽しい時間を過ごせるように工夫するといいだろう。

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