人付き合いのコツ
フランス文学者らしく、ユーモラスな語り口の中にも明快な論旨で、人付き合いのコツをずばりと言い当てている河盛好蔵の『人とつき合う法』(新潮文庫)は、「酒席のことは、その場かぎりとして、忘れてしまうこと」を勧めています。
太宰治も『新ハムレット』(新潮文庫)の中で登場人物に、「座が乱れてきたなと感じたらすぐに席を立ち、そのとき本来の会費より多めに置いていくとよい」と、スマートな酒の飲み方について語らせています。
もっとも太宰本人は酒癖が悪いことで有名だったので、自分で書いたことの実行はできていなかったようですが。
なかには「飲みに誘いたくとも体質的にお酒が飲めない」という人もいると思います。そういう人はウーロン茶を飲みながらでも、その場の雰囲気に合わせて楽しく話せれば問題はないし、それも嫌なら、無理して酒の席に付き合わなくてもいいのです。
私は以前、上司・部下を問わず職場の人とは飲まない主義だという人から、「職場で浮いているように感じる」と相談を受けたことがあります。「飲みに誘うべきでしょうか」と言うのです。私は「嫌なのに無理をして付き合うことはありません。仕事をきっちりしていれば問題ないでしょう」とアドバイスしました。
先に挙げた『人とつき合う法』は、「酒はつき合いで飲むべきものではなく、自分自身の楽しみのために飲むのが本筋であろう」として、「『あの男はつき合いのいいやつだ』という言葉には常に多少の軽蔑が含まれている。あたかも、『あの男はつき合いにくいや』という言葉のなかに、一種の敬意が含まれているように」と指摘しています。
「あいつは付き合いにくいやつだ」と思われるのも、ある意味で勲章。「誘えない」と悩んだり、気を使って無理に付き合う必要などないのだ、ということです。
▼無理に付き合うよりも仕事で示せ