所有者イコール運転者とは限らぬ
2019年8月に起きた常磐道のあおり運転殴打事件。容疑者が危険な運転を繰り返し、被害者を殴打した映像は衝撃的だった。あれを見て、万が一に備えてドライブレコーダー(以下ドラレコ)を買おうと考えた人も多かったはずだ。
ただ、ドラレコも万能ではない。証拠調査士の平塚俊樹氏は、次のように指摘する。
「あの事件の容疑者が捕まったのは、車を降りて被害者に暴力をふるったから。録画されていたのがあおり運転の映像だけなら、顔が確認できず、容疑者の特定には時間がかかっていたでしょう」
ドラレコを取り付ければ、あおり運転をした車のナンバーは記録できる。そこから車の所有者を割り出すことも容易だ。しかし、あおり運転の責任を問われるのは車の所有者ではなく運転者。所有者イコール運転者とは限らず、所有者が判明しても、その証言に違反時の運転者の顔の映像などが加わらなければ、特定・逮捕は難しい。まして反社会勢力のように、借金のカタに取った他人名義の車や盗難車を使われるとお手上げだ。
「重大事件なら警察もしっかり捜査をして運転者を特定しますが、軽微な犯罪は後回し。今回はテレビ放映で注目されたため、捜査は迅速に行われましたが、例外的です」